日本基督教団と戦争責任告白(2003 戦責告白・船越教会・修養会)

2003.9.15、船越教会(横須賀)信徒修養会

1.日本基督教団とは

 1941年、日本におけるプロテスタント系30余派、2,300余の教会が、1939年に公布された宗教団体法(戦時体制に宗教を国家協力させるための法律)に基づき(契機として)合同して成立した合同教会。国家政策に協力(余儀なく、積極的にの幅あり)。各派は「教団」により存命を計る。1945年、宗教法人令により、離脱した教派の後も一つの教団として戦後の再出発をした。敗戦以後、根本的反省を経ないまま、占領軍の宗教政策、及びキリスト教ブーム、教勢の拡大志向 − 新日本建設キリスト運動の展開。1951年、日本基督教会の離脱。1954年「教団信仰告白」の制定。伝道不振。方策の反省。

2.伝道から宣教へと広い視野を

 1956年、宣教百年第二次計画案「社会大衆への福音の浸透」可決。朝鮮戦争(1950年)を契機とするキリスト者平和運動(1951年)。宣教理解の反省。クレーマー協議会(1960年)。

「教団宣教基本方策」(体質改善論、1961年)
『「宣教とは何か。a. …和解のみわざをなされることに信頼をもち、わたしたちの隣人に対して人格関係を挑むこと。b. 従って宣教は、この世の現実のなかで、隣人と生活を共にし、重荷と弱さを共にしのび、世の罪とキリストによる神の国の希望に対して連帯責任を負う生活の中で遂行されます。…言葉による宣教はこのことと結びついて、その威力を発揮するのであります」。(『日本基督教団史 資料集第五編』pp.187ff.)

「社会活動基本方針」(1966年)
 教団は伝道の困難から社会大衆への浸透という伝道論の方策をさらに掘り下げつつ、第二次大戦下のキリスト教の戦争協力への反省をふまえ「隣人と共に生きる」という宣教論(福音理解)をより根底的なベースにしてきた(例えば宣教委員会を伝道・教育・社会委員会やその他の個別問題の働きの総合的立場に据えてきた)。

3.歴史の負の遺産を大切に

「第二次大戦下における日本基督教団の責任についての告白」(1967年)
 私自身の関わり。戦争との関わり。太平洋戦争(集団疎開組)。朝鮮戦争(農業と工業の二極化の経験)。広島(原爆の無差別殺戮)。呉(海軍の街の復興)。岩国(米軍基地、安保体制の自覚等)

4.しかし、対立が

「戦責告白」を巡る賛否の収集としての「五人委員会」答申。戦責告白路線と信仰告白路線との対立 − 万博キリスト教館建設に反対する運動(1969年)。教団への問題提起。教師検定。会議制。教団総会の休会(第17回、1973年)。信条主義(信条ファンダメンタリズム)、教会主義の主流化。それが伝道論優先の結果を教団内に生んだ。その場合、伝道の内容は「共に生きる」ということよりも、キリスト教教義・イエス・キリストの啓示・贖罪の出来事への決断に事柄を集中させるために、決断を迫られ促される人間の生存への抽象化を起こす。

 言葉(信仰告白的事態)による決断は、生存の状況への肉化(歴史的・宣教的事態)と、相関的であることを失うならば、宗教(福音)の観念化は免れない。開かれた聖書理解、開かれた宣教論(被差別者・被抑圧者との連帯、反権力、反靖国天皇制、性差別、沖縄)の方向の大切さ。しかし、「教会派」「社会派」のレッテル貼りが先行した。個別課題の宣教への否定決議(「靖国・天皇制情報センター」「性差別問題委員会」)。この間、問題が歴史の経緯や世界や日本の政治・経済社会との関連で扱われるよりも、教会政治主義的な文脈での扱いがなされてきたことは残念である。

5.沖縄キリスト教団との合同(1969年)とその「とらえなおし」可決(1978年)

 教会の合同が、国家の沖縄合併・差別と同じ質を担ってしまった。「沖縄と本土の関係史は『琉球処分』に代表される差別と抑圧史である。文化支配、沖縄戦、基地を残したままの1972年返還、アメリカの軍事グローバリゼーションへの協力・組み込まれ。教会はそれに組み込まれてはならない。

「合同」の実質化の一つである「教団名称変更」(特設委員会案、後に沖縄教区議案)は継続審議であったものを第33回総会(2002年)で廃案とされる。

6.基地の街の教会の使命。生活と信仰との乖離・矛盾を支え合う。

「戦争」の意味の変化。先制攻撃、メディア軍事翼賛体制、新自由主義経済による臆面なき再開発(ジェントリフィケーション)、軍事文化の普遍化。住民の管理体制、科学の軍事技術化。「安保」体制強化としての軍事化(基地の恒久化、新ガイドライン、有事法整備、自衛隊の海外派兵)、軍事化を下支えするナショナリズムの高揚、メディアの自己規制、住民の国家管理(住基ネット、個人情報保護法等)。教育の管理(選別教育、愛国心の強要)。

船越教会 横須賀(2003 教会と聖書 ⑭)

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