「望楼」 パレスチナを忘れない

2012.2.25 キリスト新聞

 「兵士より前に人間であれ」などと言えば軍隊は成り立たない。かつてそんな兵士たちに出会った。ベトナム戦争時、岩国に駐留していた米軍の反戦兵士である。

 パレスチナ占領地への兵役で虐殺、略奪、一般住民の弾圧を体験して人間としての葛藤に悩むイスラエル軍退役青年たちが、政府、世論の重圧に抗して「沈黙を破る」というNGOを立ち上げ写真展を行い「占領」の悲惨を世論に訴えた。

 20年来パレスチナ占領の構造と悲惨を難民キャンプに密着し、どん底の生活にも拘らずそこに輝く人間性を映像で訴えてきた土井敏邦監督が、人間共通の“普遍性”を描く目的で130分の映画『沈黙を破る』(2009年)を作成した。

 日本キリスト教婦人矯風会は1月31日「パレスチナを忘れない 第3弾」としてこの映画の上映会を、「ガザの子どもの絵の展示」と同時に、大久保の会館で行った。参加者65人。大東京では極小の集いだったが忘れることのできない集会であった。

 自爆テロ、そして報復攻撃という連鎖に、娘をテロで失った親が憎しみを超えて「対話」が解決だ、と述べる場面の取材などいわゆる「パレスチナ支援運動」の感覚を超えた平和への基本的視点を示された思いがした。(健)


(サイト追記)

☆2009年度(第83回)キネマ旬報ベスト・テン 文化映画部門 第1位
☆2009年度日本映画ペンクラブ会員選出・文化映画ベスト1
☆第9回石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞受賞

野村正昭氏(映画評論家)
「沈黙を破る」の元将兵たちの証言―なぜかれらが侵略し、住民たちを虐殺するに至ったかという肉声に圧倒されて、首位に推すことにした。家族との葛藤を含めてここには戦争の実態を抉り出す普遍性が見事に描かれている。 –「キネマ旬報 ベストテン」選評より

渡部実氏(映画評論家)
この映画には国際的な視野からイスラエル/パレスチナ問題が取り扱われている。すなわちこの映画は双方の地域に綿密な取材を敢行、両者の可能性を可能な限り客観的に把握できるであろう日本人の立場からその問題を考えた力作。 –「キネマ旬報 ベストテン」選評より

パレスチナ自治区の占領地で日常的に繰り返される暴力や殺戮。イスラエルでは多くの兵士が占領地での任務に就くが、今までその実態が語られることはなかった。自らの加害体験を社会に伝えるために結成された青年退役兵たちのグループ「沈黙を破る」へのインタビューを通して、「占領」の本質を浮き彫りにする。(「BOOK」データベースより)