「教会と聖書」54号(2006年8月1日発行)所収
(明治学院教会牧師、健作さん73歳の誕生日)
JR岐阜から高山本線で約40分、坂祝(さかほぎ)駅で降りて4キロ、ひと山越えて美濃の台地に出ると民家から離れた畑の真ん中、樹木の間に、瀟洒な白い会堂が見える。
日本の典型的な農村教会である。
昭和初期、賀川豊彦や杉山元治郎らの提唱で農民福音学校を岐阜・加茂野で開校した岩井文男の影響を受けて、農地開墾に携わり、戦後郷里に教会を建設するという兼松沢一の志により、その開墾地に設立された教会である。
初代、岩井文男。安藤恵三、小暮光司、大阪正治の諸牧師が続き、小田部正一が現在牧会に奮闘している。
設立時は坂祝教会だが、西濃、東濃と広がる「美濃の国」の真ん中の広範な地域を宣教の視野に収める意味で中濃教会を名乗った、という。
この教会の設立は1946年10月6日、これは僕がこの教会で受洗した日でもある。
50周年記念礼拝の説教に招きを受けた。
牧師館の佇まいは60年前と変わらない。
魂の故郷である。


(サイト記)上の写真は、旧坂祝(現中濃)教会会堂、兼牧師館(新会堂が建ってからも牧師館として2019年3月まで残された)。
1階の居間で岩井文男牧師により礼拝が守られた。健作さんは戦後1946〜52年、同志社入学までをここで暮らす。
「魂の故郷」と称された教会堂はここである。
設計はヴォーリズ。この会堂以前は農地に建つ藁葺き屋根の家屋で『岩井文男 敬虔なるリベラリスト』に当時の写真が掲載されている。
岩井文男牧師は1952年設立の蘇原教会を兼牧、健作神学生は京都教会に籍を置きつつ蘇原教会の応援を続ける中で溢子さんと出会う。

(サイト記)上の写真は、現在の中濃教会会堂。小田部牧師と溢子さん。
健作さんのスケッチ画は、写真と正反対の方向から描いたものである。奥に旧会堂・牧師館が建っている。



田浦教会 横須賀(2006 教会と聖書 ㉙)

▶️ 蘇原教会 岐阜県加茂郡白川町(2006 教会と聖書 ㉚)
▶️ 中濃教会(旧坂祝教会)魂の故郷(2006 教会と聖書 ㉘)
▶️ 坂祝は信仰の故郷(2016 中濃”旧坂祝”教会70周年)
▶️ 「戦後の農村へ ー 僕らの村の使徒行伝」三品進(1984 引用)
▶️ 昭和史に生きた痛快な軌道 井上喜雄(1984 書評・引用)
▶️ 十字架の死に向かいあう(2004 中濃教会・礼拝説教)