2006.8.6、明治学院教会(41)、聖霊降臨節 ⑩
(単立明治学院教会 主任牧師1年目、牧会48年、健作さん73歳)
エレミヤ書 6:13-21
1.エレミヤは旧約の預言者。預言者とは何か。
紀元前8世紀から7世紀に、イスラエル民族の中で活動した「神の意志と時代の退廃との間に起こしめられた」比類稀な信仰活動者たち。
預言者を表す”ナービー”は「(神に)召された者」「神の代言者」。
”ナービー”は旧約聖書に312回出てくる。
2.旧約聖書(元来のユダヤ教の経典)は「律法・預言・諸書」(トーラー・ネビーイム・ケスビーム)の3部作。
「律法(トーラー)」は時間・状況・歴史を超えた神の意志を伝えている。
モーセの「十戒」に代表される(讃美歌21の「礼拝文」93-3)。
「預言(ネビーイム)」は、律法の規範性が崩れた時代・状況・歴史の中で、神の言葉を聴く運動。
3.イスラエルの民衆とその指導者たちは、地中海沿岸の貿易、農業生産の豊穣な国々の文明に触れ、共同生活が基本だった生活形態を失い、強大な権力の専制国家の支配に入り、貧富の格差と差別の多い王国に成り下がった。
主(ヤーウェ)なる神を中心とした律法(契約)共同体を形骸化した。
預言者は、神の意志と人間の現実の堕落との間にあって、人々に神の言葉の力の回復を迫った。
4.エレミヤ 6:13節。
”「身分の低い者から高い者に至るまで、皆、利をむさぼり”(エレミヤ書 6:13、新共同訳)
極めて現代的状況(連想は各自が!)。
「利をむさぼる」は、律法の第一戒「あなたは、わたしをおいて他に神があってはならない」(出エジプト記 20:3)の破壊。
新約聖書でも「あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない」(マタイ 6:24)に通底する。
共同体の破壊。
5.偽預言者との戦い。
”預言者から祭司に至るまで皆、欺く。彼らは、わが民の破滅を手軽に治療して、平和がないのに、『平和、平和』と言う。”(エレミヤ 6:13b-14、新共同訳)
6.エレミヤ 6:16「昔からの道」は、イスラエルの民が、エジプトでの奴隷状態から、神の導きにより脱出をし、荒野の40年の試練を経て、内面的にも、民族共同体の在り方としても、律法を生かしてきた道。
苦難の道でありつつ、希望と喜びの道、「幸いに至る道」(6:16)。
”「さまざまな道に立って、眺めよ。
昔からの道に問いかけてみよ
どれが、幸いに至る道か、と。
その道を歩み、魂に安らぎを得よ。」”
(エレミヤ書 6:16、新共同訳)
専制君主の一極支配・アメとムチで飼い慣らされ、媚びと隷属する道(昔からの道)から脱却する道(幸いに至る道)。
7.先週出会った本。
『戦争で死ぬ、ということ』島本慈子(やすこ)、岩波新書 2006.7。
画集『沖縄戦の絵 – 地上戦・命の記録』 NHK沖縄放送局編 2006.6。
”戦争のリアリズム”を知ることは「憲法9条問題の基礎知識」。
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