み言葉はわが足の灯(2010 礼拝説教・詩編119)

2010.11.7、明治学院教会(209)
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(単立明治学院教会牧師5年目、牧会51年目、健作さん77歳)

詩編 119:105-112

1.少し前、東京の町田市の農村伝道神学校へ車で行きました。

 カーナビがあるので安心していました。

「目的地周辺です。音声案内を終わります」。しかし、それらしい施設はありません。

 道路で工事をしている人に聞きました。確かにそこですが、山の上で、道がないのです。ずーっと回り道をしないとならない、と道を教えてもらいました。「二つ目の信号を右に回り」との指示です。

 私は、後から考えて、聖書の言葉とその受け取り方にもこの二つがあることを考えさせられました。

 一つは、カーナビの電波のように高い所から世の中や人間の在り方、信仰の在り方など、全体を尺度として示す、物差し的覚醒を促す受け取り方です。

 預言者の書などはそういう性格を持っています。

 二番目は、どう今日を過ごすかなど、当面の道しるべ的な発信です。

「コヘレト、箴言、詩編」などはそのその役割を持っています。

2.詩編119編は「道しるべ」として書かれた詩です。

 律法を守ることを勧める教訓詩ですが、体系的「律法」の教えではありません。興味を持たせるように、アルファベット詩になっています。

 一種の「数え歌」。

 脈絡や各節間の意味の関連は薄く、主題である律法を八つの類義語で言い換えて表しています。

 律法・定め・命令・掟・戒め・裁き・御言葉・仰せ。

 時代背景は、捕囚後。神殿では律法学者が律法の厳密な解釈を論議し始め、ユダヤ教の萌芽が見え始める時代です。

 この詩を詠んだ詩人は、律法解釈の複雑さより、ヤハウェ(主)信仰の生活そのものを大事にします。

 庶民的「いろは歌」の形で、教えを説いた人です。支配者層に圧迫されている社会的弱者の立場にある人であろう、と言われています。

 元々、詩編1編〜119編を内容とする歌集があり、1編と119編とはその枠なのです。

 詩編1編の冒頭と詩編119編の冒頭は次のような対応関係にあります。

”いかに幸いなことか
 神に逆らう者の計らいに従って歩まず
 罪ある者の道にとどまらず
 傲慢な者と共に座らず
 主の教えを愛し
 その教えを昼も夜も口ずさむ人。”
(詩編1編1節-2節、新共同訳)

”いかに幸いなことでしょう
 まったき道を踏み、主の律法に歩む人は。”
(詩編119編1節、新共同訳)

3.ここでは「律法に歩む」という方法が強調されています。

 方法と内容は相即(二つの対立する者が相互に融合し一つになる)しているので、方法だけの強調ではないと思います。

 しかし、方法を身につけることが大事なのです。

 信仰生活の長い、老練な方が、日曜日の礼拝では「何か一つ受けて帰ることにしている」と言っているのに感心しました。

 若い説教者で、必ずしも修練が厚いわけではないのに、それには左右されず、礼拝への方法をしっかり持っておられる。

 その方法が説教者をも支えているのだなと思いました。

 この詩編119編の作者は「甚だしく卑しめられている」(詩編119:107)、「わたしの魂は常にわたしの手に」(命の危険、詩編119:109)、「主に逆らう者がわたしに罠を」(詩編119:110)という危機の日々を経験しています。

 その中で、神の「他者性」を7つの表現(御言葉、道の光、歩みを照らす灯、命、裁き、命令、掟)に言い換えつつ、こちらの生き方を「果たす、守る、忘れない、それない、心を傾け、従って行く」と多様に述べ「受け入れ、教えて」と祈り続けています。

”あなたの御言葉は、わたしの道の光
わたしの歩みを照らす灯
わたしは誓ったことを果たします
あなたの正しい裁き守ります
わたしは甚だしく卑しめられています。
主よ、御言葉の通り
 を得させてください。
わたしの口が進んでささげる祈りを
 主よ、どうか受け入れ 
あなたの裁きを教えてください
わたしの魂は常にわたしの手に置かれています。
それでも、あなたの律法を決して忘れません
主に逆らう者がわたしに罠を仕掛けています。
それでも、わたしはあなたの命令からそれません
あなたの定めはとこしえにわたしの嗣業です。
それはわたしの心の喜びです。
あなたの掟を行うことに心を傾け
わたしはとこしえに従って行きます。”
(詩編 119:105-112、新共同訳)

 方法を身につけた信仰者へと成長してゆきたいと思います。

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