ふるまいの人から委ねる人に(2012 礼拝説教・ガラテヤ・待降節)

2012.12.16、明治学院教会(297)降誕前 ② 待降節 ③

(単立明治学院教会牧師、健作さん79歳)

サムエル上 3:6-9、ガラテヤ 1:11-17

わたしを母の胎内にあるときから選び分け、恵みによって召し出してくださった神”(ガラテヤ信徒への手紙 1:15、新共同訳)

1.キリスト教は「出会いの宗教」だと言われます。

 これは「まとめられた使信」(信条、信仰告白、教義、教理)が宗教の中心ではないということです。

 地上の宗教ですから、儀礼・教義・組織を必要最小限度は維持しています。

 しかし、それが肥大化・固定化して弊害をもつ時、いつも改革が起こされてきました。

 16世紀の「宗教改革」しかり、20世紀のラテンアメリカの「解放の神学」しかり。

 「出会い」と「教義」の関係を譬えれば、「山」と「地図」の関係でしょう。山は登るたびに新たな体験です。地図は絶えず書き直されても手引きに過ぎません。「なぜ山に登るのか、山がそこにあるから」と先人がいった名言があります。これを「山との出会いの関係」だとすると、「地図」は「山への理解」です。

 これを信仰の世界になぞらえますと、「出会い」は「神との関係」、その投影としての「人との関係」です。それを「神関係」と表現しますと、もう一方は「神への理解」、その投影としての「人への理解」です。

 今日のテキスト、パウロに即して考えると次のようになります。

2.ふるまいの人から

 パウロが「わたしを母の胎内にあるときから選び分け、恵みによって召し出してくださった神」(ガラテヤ 1:15)という時、これはパウロの「神関係」ですが、これは終始変わっていないのです。

 ところが「神への理解」の方は、パウロは大きく変わっていくのです。彼は過去を振り返って自分が「ふるまい」(1:13)の人であったと述べます。

”あなたがたは、わたしがかつてユダヤ教徒としてどのようにふるまっていたかを聞いています。わたしは、徹底的に神の教会を迫害し、滅ぼそうとしていました。”(ガラテヤ信徒への手紙 1:13、新共同訳)

 二つの「ふるまい」即ち「神の教会を迫害」した者、「先祖からの伝承(律法)を守る」ことに人一倍熱心であった者、と記されています。

 ところが、この「ふるまい」が変わるのです。

「律法による神理解」に基づいていたものが、180度変わります。

「イエス・キリストの啓示によって」(1:12)変えられたというのです。

 パウロはこれは

「人間から受けとったわけでもなく、教わったわけでもないのだ」(1:12、田川建三訳)

 と強調しています。

「イエス・キリストの啓示」とは彼にとって具体的にはダマスコ途上の体験(使徒言行録 9:1−9:22等)を指していますが、内面的には律法による「ふるまい」の生活(律法によって救いを求めた自己実現の生活)に行き詰まったことと考えられます。

 律法の行いを好しとする神は、行えない者には裁きをもって臨む”強い”神でした。彼は行き詰まって、限りなく”弱い”自分に気づいたのです。その”強い神”に耐えられなくなった時、十字架の苦難と死をもって自らを表す、限りなく”弱い神”を「啓示」(神の働き)によって示されたのです。それは気がついて見れば、「イエスの十字架の出来事」によって理解された”神との関係”でありました。

 その神は、弱いパウロを限りなく包み込む「恩寵の神」であったことに気が付きます。「神関係」は変わらないが「神理解」が”律法の神(強い神)”から”十字架の神(弱い神)”に変わったのです。

3.委ねる人に

 パウロは以後「ふるまいの人」から”神の恩寵の関係”に全てを「委ねる人」に変えられました。

 私たちの生き方を省みると、絶えず「格好をつけて」生きています。

「格好をつける」時には、”自分本位・自己実現”の生き方が前面に出ています。

 そこを絶えず「イエスの十字架の死に与って己に死ぬこと」が大事なのです。

「主にありてぞ、われ死なばや、主にある死こそは、いのちなれば」(讃美歌 54年版 361番2節)

 この「死に与かる」(ローマ 6:4)徴(しるし)が「洗礼」の深い意味です。

「出会い」を「クロス・エンカウンター」と表現した人があります。

 クロス(十字架)を媒介とした「出会い」を大切にしたいと思います。

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