「望楼」 人権の主体

2012.1.28 キリスト新聞

 日立製作所で朴鐘碩さんは60歳の定年を迎えた。韓国籍であることで採用を取り消され、裁判に訴え1974年に勝訴した「日立就職差別裁判」元原告である。

 朴さんは入社後、組合経験者が会社幹部に昇進するおかしな現実を問い続けて、管理社会で人間の主体的あり方を求めていく「続日立闘争」を闘った。不器用な40年の会社員人生の最後の日、部署を超え大勢がフロアに集まった。花束贈呈。長い拍手。この希有な光景は報じられた(「朝日新聞」2011年12月28日・夕刊)。

 1月6日、「退職を祝うシンポジウム」が川崎で行われた。若い学徒4人の「日立闘争」の今日的受容と意味を問う研究発表の後、加藤千賀子(横浜国立大教授)、西川長夫(立命館大名誉教授)、崔勝久(最初からの裁判支援者)、朴鐘碩の4氏が語った。

 ここでは個別民族差別闘争の出発点の域をはるかに超えて、「国民国家」を問い、定着しつつある「多文化共生」の虚偽を問い、日本社会の根底に「人権(人間)」の主体の確立を促す歴史的意義が鮮明にされた。

 朴さんが「苦しかった」と漏らした一語に涙したことを語る崔さんの涙に参加者も涙した。各人が朴さんに呼応することがこれからの課題だ。(健)