あでやかさは欺き、美しさは空しい。主を畏れる女こそ、たたえられる。(箴言 31:30、新共同訳)
2011.12.7「現代社会に生きる聖書の言葉」
湘南とつかYMCA ”やさしく学ぶ聖書の集い”
第26回「旧約聖書 箴言の言葉から」④
箴言 31:10-31
(明治学院教会牧師、健作さん78歳)
1.箴言の最後を飾っているのが「アルファベット順の詩」です。
詩編にも119編などアルファベットをつけて構成した詩が出てきます。アルファベット順に言葉を並べるのは多分教育上リズムをつけて覚えやすい事から生まれた形式であろうと思われます。文学的な構成の面白さがあります。
箴言の最後にこの歌を持ってきた編集者は、多分その面白さを狙ったのでありましょう。その内容が、すぐれた女性の描写ときていますから、男性中心の宗教・社会・政治の体制への批判を込めて、この書を結んだのだと思います。
旧約聖書は基本的に男性中心です。それゆえに貴重な記録です。また実際にこのような女性がいなければ、理想論だけでは書けませんから、現存していた女性像だと思います。当時もこんな女性がいたということを考えると、イスラエルの社会は律法による建て前にも拘らず、自由で流動的な雰囲気が庶民の生活にはあったと思われます。
2.内容
社会層から考えると「召し仕えの女たちには指図を与える(箴言 31:15)」という文言から想像して、中流階級以上の家庭であろうと思われます。
「夫は名を知られた人で、その地の長老らと城門で座に着いている(31:23)」は、町の公的な仕事などに関わっていた事を示しています。「有能な女は多いが、あなたはなお、そのすべてにまさる(31:29)」とありますから、よほどすぐれた女性であったと思われます。
いわゆる料理・洗濯など家事労働をこなす「良妻賢母」というのではなく、土地の売買を伴う農業経営にも長け(16節)、商業取引の分野での実力を持っていた(18節・24節)一家の経済活動の中心を担っている。彼女は蓄積した資金でぶどう畑を開く(16節)経営者でもある。「社会的弱者への気配り」を忘れず(20節)、手仕事にも長けていた(13節・19節)。
また一族への気配りをして(15・21・27節)雪の日でも憂いのない衣服の用意など、こまやかな心遣いを示す。また「言葉の人」でもあり、知恵の言葉で、子供たちや周囲の者の教育にも気配りをしています(26節)。夫や息子からの尊敬を受ける「力と気品」(25節、詩編29:1、93:1、104:1 神への讃美に関係する)を持っています。
3.箴言は「女・妻(‘ishshah’イッシャー)」をその能力だけでは見ていない。
能力を褒めながら、夫・息子ら、一族・社会、そして神との関係全体から見ている。
箴言の編集者が1章7節で「主を畏れることは知恵の初め」と言ったように、末尾を「主を畏れる女こそ、たたえられる」(箴言 31:30)で結んでいることは注目すべきであろう。
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