三つよりの糸(2009 礼拝説教・コヘレト)

2009.6.14、明治学院教会(158)聖霊降臨 ③

(単立明治学院教会牧師 5年目、健作さん75歳)

コヘレト 4:1-12、ローマ 12:9-21

”三つよりの糸は切れにくい”(コヘレト 4:12)

1.今日の箇所に「改めて太陽の下に」(4:1、4:7)とあるが、コヘレトを1章の初めから読んでくると「太陽の下に」がここまででも10回出てくる。

 これはプトレマイオス王朝(BC323-AD30、16代に渡りエジプトを支配した王朝)の抑圧的支配を暗示する言葉である。

「改めて」の語が4章の「虐げ」を一層悲惨なものとして浮き彫りにする。

2.4章1−8節は3部に分けられる。

① 4:1-3 権力者の横暴の前に虐げられた者の涙を慰める者のいない空しい状況を見よ。死んだ人の方が幸いだ。生まれてこなかった者がより幸いだ、何故か「悪い業を見て(体験して)いない」。

② 4:4-6 生きがいを求める人間の労苦の空しさ。「片手を満たして、憩いを得る」は悪しき時代の生活の知恵か、「両手を満たして、労苦するより良い」。競争意識を持たず、他者の分を尊重しながら、穏やかな心で働くことを示唆している。

③ 4:7-8 魂の安らぎを得ない富の追求は誰のためなのか。労苦というものは、あの人のためにという愛があったこそ意味がある。富が目的だけの「仕事人間」は「空しく不幸だ」。この言葉には、新自由主義経済時代と重なる響きがある。

3.4章9-12節。さて、今述べたような時代をどう生き抜くのか。

 ヘレニズム文化(アレクサンドロス大王以来、怒涛の如く流れてきた利潤優先、個人主義の生活様式、競争主義)に対して、古いユダヤ文化の価値が見直される。

「ひとりよりもふたりが良い」(4:9)
「倒れれば、ひとりがその友を助け起こす」(4:10)
「ふたりで寝れば暖かい」(4:11)
「ひとりが攻められれば、ふたりでこれに対する」(4:12)
「三つよりの糸は切れにくい」(4:12)

 みな長い経験から生まれた諺的知恵の言葉である。生活の温かみがある。

 ローマの信徒への手紙 12:9-21は、倫理として語られている。ユダヤ律法にも倫理はあった。が、コヘレトはその内実を知恵として述べる。倫理を知恵にまで昇華させたのは、「太陽の下」の悪しき状況を生き抜いた人々であった。

4.中ノ瀬重之神父は、コヘレトの解説テキストで「三つよりの糸」に暗示される道を五つに纏めている。

・民が息づける社会構造の保護
・命に仕える宗教
・協同して働く
・分かち合い
・生活のささやかなことに楽しみを見出す

5.教会宛にクリスマス献金支援先の「女性の家 HELP(House in Emergency of Love&Peace)」から「ネットワークニュース No.65」が届いた。

 国籍、在留資格を問わない女性と子供のための緊急避難センターとして、シェルター活動、電話相談を行っている。最近ホームレスの日本女性も多いという。

 ここの働きは『希望の光をいつもかかげて 女性の家 HELP 20年』(日本キリスト教矯風会 2006)に詳しい。

「とうちゃんは死んじゃったと帰国する子ら」1996年ごろ「HELP日誌」に載った句だという。性暴力被害の移住女性とその子らが想像される。

 そんな中でなおこの運動と施設も「三つよりの糸」の働きをしている。

158-20090614

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