歴史意識と記憶(2009 望楼 ①)

阪神・淡路大震災から14年目の日

「望楼」 歴史意識

2009.1.17 キリスト新聞

「平成二十一年」という年代標記の年賀状を今年も幾つか戴いた。皆、善意の人達だ。国家主義者ではない。だが、イノセントな歴史意識に戸惑う。では、元号に対して西暦を共通暦として用いれば問題はないかといえばそうではない。イスラム暦は別な歴史理解を持つ。いずれにせよ暦それ自身を相対化する視座がなければその思考は危うい。キリスト者の歴史意識も問われるであろう。

『市民の暦』(1973年 朝日新聞社。小田実、鶴見俊輔、吉川勇一編)は、「今日は何の日」感覚で367人が3千項目を綴って1年の暦を書き記した。暦の意識の根源に、失われてはならない人間の尊厳や命を据えて、それを守るために戦い抜いた人々や出来事を記憶にとどめる暦に仕上げている。

 1月17日は「東京都教組、男女同一賃金を初めて獲得。1948(昭23)年」とある。3年越しの戦いであったという。教組婦人部は、座り込み、徹夜交渉など、徹底的な戦いをしたという(丸岡秀子)。

 改訂版をつくるとすれば、この日は「阪神淡路大震災」(1995年)の日。『地震は貧困に襲いかかる』(いのうえせつこ、花伝社 2008年1月17日)という感覚と記憶の日にしたい。(健)


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