2001.1.14、 神戸教会週報、降誕節第3主日、震災から6年
(牧会43年、神戸教会牧師 23年目、健作さん67歳)
ローマ 12:9-21、説教題「悲しむ力・喜ぶ力」
▶️ 悲しむ力、喜ぶ力(2009)、悲しむ力、喜ぶ力 − 人間は関係存在(2011)
先週日曜日、役員会が終わって、事務室へ降りたら、牧師に会いたいという車椅子の見知らぬ青年が待っていた。
まず、二つのことをしてもらえないかと言う。
カップラーメンを持っているので、お湯が欲しい。もう一つは、神戸で人がたくさん集まる場所を教えて欲しいという。
第一に、脳性麻痺の方なので、お手伝いをして、とにかく腹ごしらえをしてもらった。
第二に、事柄を理解するまでの聞き取りに時間が掛かった。
結局、首からかけるプラカードを作って差し上げた。(サイト記:以下、お名前は伏せました)
”カンパをお願いします。話を聞いて下さい。母の心臓移植のため、海外へと最後の希望を繋いで、非常手段で街頭に立っているのです。奈良・大和郡山の在住で、W.Rと申します。病院・行政・友人・会社には相談しました。あと50万円なのです。”
そして、第1号のカンパを大塚先生と一緒にして、彼をひとり、元町商店街入口へと、雨の中に送り出した。
障害者用に改装された小型車には愛犬が3匹待っていた。
母と二人だけで他に身寄りはない、生活は障害者年金と時々あるワープロ入力の仕事に頼っているという。
奈良では、このたびのことで仲間や、助けを求めた教会で世話になったという。
兵庫区の「十日えびす」祭りが終わった頃、彼が再び来た。
4日間頑張ったという。
「先生、集まりました。奈良の仲間が25万、そして僕の方は一人だけど24万。ほぼ満たされました。感謝します。またこれからの経過はお知らせします。」
底知れない人間の心の崩壊に基づく殺人、嬰児がいなくなるなど、事件が連続するメディア情報の日に、心が和んだ。
しかし、また一方で、その日読んでいた本のことが心をよぎった。
野田正彰氏(精神科医、関西学院大学教授)の『国家に病む人びと』(中央公論社 2000年1月発行)。
この中の「週刊ポスト」に連載された”「北朝鮮棄民」極秘面接記”は、中国国境で北朝鮮から逃げて来る飢餓民の面接調査だが、その飢餓状態は酷い。
韓国の仏教団体の調査では、2200万人のうち、350万人16%が推定餓死者だという。
この本では、子供たちの絵を分析している。
著者は「すぐ近くにある極東の飢餓死を知ってもらおうと…それにしても人類は社会を創ることにおいて、遅い成熟しかしていないことか」と記す。
1月17日が近づいて、新聞の見出しが目を引く。
「復興住宅の孤独死42人、一般住宅の1.5倍」
「神戸市住家賃一万世帯が16億円滞納」
「『公的支援は不十分』75%被災者6割収入減」
「震災被災者のために尽くしたAさんの死」等々。
”喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい。”(ローマの信徒への手紙 12:15、新共同訳)
地震の6年を顧みる。
”御国を来たらせ給え”(主の祈り、ルカ 11:2)
この祈りに支えられて今年も歩みたい。