2001.1.7、 神戸教会週報、降誕節第2主日、震災から6年
(牧会43年、神戸教会牧師 23年目、健作さん67歳)
創世記 17:1-9、説教題「神の姿が見えない日々も」
アメリカの奴隷制度ほど残酷で人間性を無視した制度は歴史上他には存在しなかった、と著者は克明にその概観に触れつつ、四面楚歌の現実に置かれた奴隷たちが、筆舌に絶する忍従の日々の中で培った抵抗と抗議の激しい精神が脈々と流れるものとして、ニグロ・スピリチュアル、ブルース、ジャズを捉え、その黒人の歌が、アメリカ文化の発展にどれほど貢献したかの歴史を丹念に辿る。
著者は、アメリカの大学でアメリカ文学、黒人文学、日米文化交流を講義する、この分野の第一人者。
日本では、中央大学、名古屋学院大学で教鞭をとり、現在日本キリスト教団 鎌倉恩寵教会会員。
著作には既に『ブルースの彼方へ』『黒人文学』『僕の見た中流のアメリカ人』『一世としてアメリカに生きて』がある。
目次は10章。
1.ワシントン、1963年夏
2.ニグロ・スピリチュアルという意味
3.「中間航海」の果てに
4.アフリカの聖霊
5.「地下鉄道」をぬけて
6.「見えない教会」の歌
7.「合衆国の奴隷の歌」
8.フィスク・ジュビリー・シンガーズ、ヨーロッパを行く
9.スピリチュアルは未来へ
10.自由を求める歌 ー 細川周平との対談
巻末には自薦の「スピリチュアル傑作選」が22曲、解説付きで選ばれている。
この本を読んで、日本の教会が、いかに白人教会の強力な影響下にあり、さらには国家文化の中に、この百年余り囲われてきたかを自覚させられた。
関連で、北村さんが細川さんとの対談で次のように語っている。
”日本の唱歌の『ふるさと』『おぼろ月夜』を作曲した人はクリスチャンなんですよね……それを表に出さないようにするんです。それが明治政府の政策だったわけでしょう。だから文部省唱歌という名前に一元化されて……”
また、アメリカという最も身近な国の、歴史の中で、黒人の解放運動と文化運動が果たしてきている血の滲むような、しかも霊的な遺産への理解のなさに反省を促された。
印象的なのは、スピリチュアルをヨーロッパで世界的アーツ《芸術》にまで高め、その評価をアメリカで不動の位置にした、フィスク大学の黒人学生クワイア《合唱団》と指揮者J•ホワイトの奇跡的な働きである。
この大学は、南北戦争後、組合教会が母体となって設立されたという。
昨夏、奇遇で北村さんとの交わりを与えられた。
お人柄と学識の豊かさに改めて感銘を受けている。