1982年7月18日、聖霊降臨節第8主日、
1982年 神戸教会 夏期特別集会、説教と講演：木田献一氏
説教要旨は翌週の週報に掲載（文責：飯謙伝道師）
出張：7月12日（月）-13日（火）、教区議長として教団常議委員会陪席
集会総括：旧約聖書と私たちの教会（神戸教會々報）
（兵庫教区総会議長、神戸教会牧師５年目、健作さん４９歳）
＜教団常議委員会陪席報告（週報）＞
去る12日、13日、東京（教団会議室）で行われた第５回常議委員会に教区議長として陪席した。議題の主なものは、①第２２回教団総会（11月16〜18日、箱根小涌園）開催に関する件、②在日大韓教会との協約、③沖縄キリスト教団との合同のとらえなおし、④社会活動基本方針再検討、⑤東京教区問題、⑥決算等であった。詳細は「教団新報」参照。（岩井健作記）
＜1982年 神戸教会 夏期特別集会＞
主題「旧約聖書と私たちの教会」
1982年7月18日（日）説教と講演：木田献一氏（立教大学教授、百人町教会牧師）
神戸教会聖日礼拝「神と人間の契約」
（出エジプト記 19:1-16、ペテロの第一の手紙 2:1-10） ：１０４名
礼拝後 舞子ビラ（宿泊）
講演「世界帝国の歴史と神の審判」（ダニエル書 2:31-45、7:21-28）
講演後分団集会 14:00-21:00、翌日早天祈祷会：参加６１名
「神と人間の契約」木田献一（説教要旨は飯謙伝道師による）
ペテロの第一の手紙は、ペテロが形成途上の初代教会に書き送った、教会の基礎やあるべき姿を記した書です。
その２章９節には、出エジプト記１９章６節が引用されていますが、その出エジプト記は「神の民」としてイスラエルが基礎づけられる出来事を描いています。
”あなたがたはわたしに対して祭司の国となり、また聖なる民となるであろう』。これがあなたのイスラエルの人々に語るべき言葉である」。”（出エジプト記 19:6、口語訳）
”しかし、あなたがたは、選ばれた種族、祭司の国、聖なる国民、神につける民である。それによって、暗やみから驚くべきみ光に招き入れて下さったかたのみわざを、あなたがたが語り伝えるためである。”（ペテロの第一の手紙 2:9、口語訳）
その中心は言うまでもなく、十戒の授受という形で行われる神と人間の契約締結の場面です。
新約との対比から考えてみましょう。
エジプト脱出は過越の祭（出エジプト記 12章）に導入されますが、この祭はイエスの十字架と復活に関係づけられています（マタイ26章以下）。
そして十戒の授受は出エジプトから三ヶ月目の三日目（出エジプト記 19:1、19:10）のことでしたが、これは過越の祭から５０日目のことです。
新約では、復活から５０日目に聖霊降臨（ペンテコステ）の出来事が起きました（使徒行伝 2章）。
これは、神と人間が直接出会う出来事でした。
今日もイスラエルではこの７週目の祝いの日に「成人式」を行いますが、これは民族と個々人にとっての自立を祝う日であるからです。
十戒とは、決して人の行動を規制、束縛する単なる「おきて」ではありません。
それは、彼らの祖先がエジプトで王を頂点とするピラミッド型体制の最底辺にある奴隷であり神がその状態から彼らを解放したこと、また私たちが差別抑圧されている者を解放した方にのみ従うべきことを教えます。
そして、あのような体制を否定し、一人一人が神に属する人間として、その尊厳がどこまでも守らねばならないという、神の民の原型を示すものです。
「祭司の国」「聖なる民」（出エジプト記 19:6、ペテロ第一 2:9）という言葉にも、このことが込められています。
エジプトは、王を神とする「国」でした。
人は、みな彼に属していた。
しかしこの二つの表現は、人間を神として絶対化する人の傲慢を許さず、誰にも隷属しない人間の尊さと聖なる性質を語るものです。
このエジプト脱出から律法の授受により、弱肉強食の図式を打ち破る共同体が誕生しました。
ここに生き、これを守り貫こうとする姿勢が、新約から現在へと引き継がれています。
その意味で、旧約は隷属的な生き方を排して人類の歴史に根づかせるための「苗床（なえどこ）における歴史」を記しているといえるでしょう。
しかし、私たちは十戒ではなく聖霊によって新しい人間となります。
そこで、十字架・復活・聖霊によって新しい契約を人間にもたらす「苗床における歴史」を学ぶことが大きな意義をもってくるのです。
（1982年7月18日 木田献一氏説教／翌週週報掲載説教要旨 飯謙伝道師）
集会総括・旧約聖書と私たちの教会（1982 神戸教會々報 ⑫）