反逆者(2012 礼拝説教・アモス ④)

2012.9.9、明治学院教会(286)聖霊降臨節 ⑯

(単立明治学院教会牧師、健作さん79歳)

アモス 7:10-17、使徒 4:15-22

イスラエルの家の真ん中で、アモスがあなたに背きました。(アモス書 7:10、新共同訳、ベテルの祭司アマツヤがイスラエルの王ヤロブアムに人を遣わして言わせた言葉)

1.アモスの素描

 アモス書7章10−17節はアモスを記述した唯一の三人称記録です。

 彼はテコア”Tekoa”(エルサレムから南20キロの高地)の出身、小家畜(羊、山羊)を所有し飼っていた。また、平地でイチジク桑の木の栽培をしていたとされます(諸説あり)。

Tekoa, Israel

 彼は生活の現場から神の召命を受け(7:15)、紀元前750年頃、ベテル”Bethel (Beit-El)”(エルサレムの北20キロ)で10年(イスラエル王ヤロブアム2世治世下の晩年)活動した。

Beit-El, Israel

 国際情勢には詳しく、自国の歴史に通じ、イスラエルのヤハウェ信仰に立った人でした。

 都会人ではなかったが、預言を記述する(編集は後になされたが、本文には彼の記述を多く含む)知識人であった。

 風貌は”野人”であったらしい(3:1-6, 4:9, 5:19)。

 アモスの預言内容は既に何回か見てきたように、権力で踏みにじられた貧しい者たちの人間性の回復で、権力への神の審判を語りました。

 北イスラエル王ヤロブアム2世の「悪」の根本を突いていたのです。
(サイト注「ヤロブアム2世」BC780-750頃、ソロモン以来の最大級の領土・経済的繁栄・貧富の格差の時代。ヤロブアム時代の北イスラエル王国の首都はサマリア。彼の死後、栄華を誇った北イスラエル王国は、BC722にアッシリアに滅ぼされる。)

Sabastīya, Israel

2.その活動は王への「反逆者」呼ばわりをされます。

 王の国家体制を支えていた神殿ベテルの祭司アマツヤ(7:10, 7:12)の発言です。

「この国は彼のすべての言葉に耐えられません。」(アモス書 7:10)と、アモスの言葉に真理性を感じていたのです。しかし権力は彼を排除しました。

「預言者」の処刑は民衆を動揺させます。アモスの死については分かりません。彼の祭司と王への警告の言葉(11, 17節)は約30年後、イスラエルの滅亡となって実現します。

「あなたがたより前の預言者たちも同じように迫害された」(マタイ 5:12)と福音書が述べているように、アモスは預言者の系譜の先駆者の一人でありました。

3.召命

 彼が権力にたじろがずに向き合った根拠は「神の召命(Vocation, Calling)」でした。

 召命とは何か?

「信仰者が自分の信仰体験を内省することから生まれる使命意識の自覚であり、信仰による生路の決断である。ルターは召命を……職業も神から受けた使命である(Beruf [職業] は、それへと呼ばれることを原義とした)と強調した」(岩波キリスト教辞典)

 イスラエルには神殿や職業祭司・預言者集団とは別に、ヤハウェ(主)への信仰が民衆と共に生きていて、アモスはその系譜にあった人です。そこに保たれていた「神の言葉」があらゆる人間的保全(堕落した祭司の営み)を超えて、歴史の中で生きたものとなったのです。

4.今日の日本とアメリカ

 さて、今日、日本の国家体制の根本的権力構造の影には何としてもアメリカの国家体制(資本と軍事力とメディア)があります。

 この1月、沖縄では「アメリカに米軍基地に苦しむ沖縄の声を届ける会」(団長・山内徳信 参議院議員)が出かけています。

 ここにアメリカ支配の実相が出ています。

「原子力ムラ」の構造、経済・技術の仕組みの根本にはアメリカとの関係があります。

「日米安保条約」はその仕組みの一つです。

 今日9月9日、午前11時、”オスプレイ”の持ち込みに反対する沖縄県民集会が行われています(11万人規模)。

 首相官邸前の金曜日デモ、通産省前テント広場での「包囲アクション」。

 国家体制に「否」を言うのは一人一人勇気が要ります。

 私は「小さなアモス」「十字架のイエスに従う者」の投影をここに見ます。

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meigaku_iwai_286

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