構造的沖縄差別を考える(2012 沖縄・もとすす)

2012年8月発行、「求め、すすめる通信」第16号所収

沖縄から米軍基地撤去を求め、教団『合同のとらえなおし』をすすめる連絡会

 差別は差別している側にはほとんど意識されていない。 差別されている側の、呻き、怒り、叫びとして顕在する。

 朝日新聞と沖縄タイムスの共同世論調査によれば、沖縄の米軍基地が減らないのは「本土による沖縄差別だ」との回答が沖縄では50%以上だったという。本土では沖縄については「防衛省も外務省も沖縄の米軍基地に対する当然視」(鳩山元首相の言葉、2010/2/13「沖縄タイムス」) がまかり通り、それに連動するように、一般人やマスメディアの思考停止状態は変わらない。アメリカがオスプレイを普天間飛行場に配備するといえば、森本敏防衛相は何の主体性もなくその伝達に沖縄県知事を訪れ、厳しい拒絶にであっている。元来知事は基地容認であったが、6月10日の県議会選挙で知事の野党(基地非容認)が過半数(選挙に「命をかけた」とは山内徳信氏談)を占め、全会一致で「オスプレイ配備反対」を決議している状況では、過分な「アメ」の約3000億円の交付金を本土政府から振る舞われたといっても、安易に政府になびくわけにはいかない。

 今年1月、沖縄からは「アメリカに米軍基地に苦しむ沖縄の声を届ける会」(団長・山内徳信参議院議員)が出かけ、それに合わせてワシントンンポストには電子版の意見広告が載せられた。130万件の閲覧があったという。もはや「カネで取り繕う国家の仕組みは破綻したといっていいのではあるまいか」(『本音の沖縄問題』仲村清司 2012/5/20 講談社現代新書)。ヤマトとの関係史において「構造的沖縄差別」という言葉が沖縄の現状を表す言葉として用いられるようになったのは新崎盛暉(もりてる)氏の論文「現代日本における構造的沖縄差別としての日米安保」 (1996) ぐらいからだと同氏自身が述べている。本土の民衆がそんなに意識していなくても日米安保の存在の許容が「沖縄の構造的差別」なのである。同氏は「沖縄の闘いは、その差別構造とつながる内部矛盾の克服を含めて、当分続く。沖縄の闘いが、構造的沖縄差別を突き崩す時期は、周辺諸地域民衆の、沖縄に対する共鳴・共感・連帯の度合いによって遅くもなれば早くもなるだろう」(『新崎盛暉が説く構造的沖縄差別』新崎盛暉著  2012/6/23 高文研)とも述べている。上記の近著を読む限り「周辺諸地域民衆」には、韓国、東アジア、国連の「人種差別撤廃委員会」などの多種多様な闘いについての言及がある。しかし、ヤマトに関しては、例えば、SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意推進を政府サイドで後押しした岡本行夫氏らの行動、「地元対策を担う『土民軍』 による沖縄民衆への切り崩し、根まわし」について触れられているぐらいで、沖縄の基地闘争へのヤマト民衆の持続した動きは触れられていない。多分、それが事実であろう。沖縄意見広告運動について東京と関西に拠点があることなどが述べられているぐらいである。「本土」の無気力は覆うべくも無い。

 かつて10数年前神戸で講演にこられて新崎盛暉氏とお茶をご一緒したことがある。「日本基督教団と沖縄キリスト教団との合同のとらえなおし」を説明した。「沖縄差別の宗教版ということですね」と翻訳して理解してもらった。「求めすすめる連絡会」はその系譜を担っている。それが「沖縄構造差別」につながるとすれば「安保」は避けて通れない。神奈川教区の平和聖日集会は【「日米安保条約」を「日米平和友好条約」ヘ – 沖縄返還40年を考える(講師:池住義憲氏)】をテーマに行う。特に意識して構造的沖縄差別の問題を考えていきたい。

「求めすすめる連絡会」 世話人代表:岩井健作

新崎盛暉氏の著書は、現在Amazonで83作品あります。(2018.11.20)

最後の不発弾が処理されるまで(2009 沖縄)

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