あなたにはあなたの役目が(2007 礼拝説教・ガラテヤ④)

2007.9.23、明治学院教会(88)、聖霊降臨節 ⑱

(牧会49年、単立明治学院教会牧師 2年目、健作さん74歳)

ガラテヤの信徒への手紙 2:1-10

1.ガラテヤ2章1節から10節は、パウロが提唱し、自ら参加した「エルサレム会議」のことが記されています。

 この会議について使徒言行録15章に記録がありますが、これは当事者ではなく、歴史家が後代に記したものです。

 この会議から学ぶべき主要点を整理してみます。

(1)背景。エルサレム教会と異邦人教会の確執。

・エルサレム教会:ユダヤ律法の伝統を温存した福音理解に立ち、初代教会の権威の中枢であった。

・異邦人教会:パウロの生命的思想、律法からの自由が福音理解の中心、それゆえギリシア人の入信にあたっての割礼を強く否定。

 さらにエルサレム教会の権威を笠に着る者が、割礼を強要して、異邦人教会を荒らし回った者たちがいた。

 アンテオケで事件は起こった。パウロは原則的なケジメをつけるため、エルサレムでの会議を提唱した。

(2)経過

 パウロは次の道を避けた。分裂・妥協の道。および自分たちの真理性だけを貫徹させる道。

 選んだ道は、「福音の真理(福音は神の恵みに基づき、律法の充足には依らない)」を徹底して示し、理解を求め、課題を共に負う道。「会議」の精神を貫徹させた。

(3)会議に臨む姿勢

「啓示によって」(2:2)という独立性を保った。

 同時に「ペトロに働いた方は……パウロにも働いて」(2:8)という相手の尊重という謙虚さを持った。働きの違いを「恵み」と認めさせた。

(4)会議にギリシア人キリスト者(割礼のない)テトスを同伴して、割礼の強制を現実的に回避、会議の成果を形に表した。会議と現実に二元化を避けた。

(5)パウロは会議を「交わり」へと進展させる持続的方法として「貧しい人たちのことを忘れない」献金を実施して、実りを残した。

「貧しい者」は、当時エルサレム教会の代名詞であり、旧約の思想の系譜であった。

2.テキストから学ぶ現代の黙想

 私たちの社会は、話し合い、協議から始まって、さまざまな会議に網の目のように囲まれ、成り立っている。

 もし、会議が強者(権力・財力・能力・武力)の上意下達の手段で、会議が「真理・正統」としてまかり通るための、手続き・妥協・儀式・手段であるならば、その社会はどんなにか暗く虚しいに違いない。

「民主主義(デモ”民”+クラトス”力”)」なるものが、そうならないように「権力に歯止めをかける」約束事として「近代憲法」は勝ち取られてきた。

 最も弱い者の立場からの叫びを根底とする「不断の努力」に依らないと、せっかくの制度も空洞化します。

「神は会議の構成員の最も小さき者の一人に臨み給う」(リンゼイ)という真理が忘れられてはなりません。


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