「甲山(かぶとやま)裁判」と教会(1997 週報・兵庫教区連帯)

1997.4.27、神戸教会
復活節第5主日礼拝週報

(神戸教会牧師19年目、牧会38年、健作さん63歳)

《この日の説教は翌週の週報に掲載》
創世記 1:3-5、イザヤ 60:1-3、「光あれ」岩井健作


 兵庫教区は1993年の教区総会で「甲山事件裁判支援特設委員会」(委員長:本多肇)を設置し、「荒木潔さんを支える会」や「甲山事件救援会」と連帯し、支援活動を続けている。

 また今年の教区総会では、支援のための報告等の時間を持ち、『私と甲山事件と教会』(仮題)の文集が計画されている。

 神戸教会でも、社会部が取り組みを行い(N兄や私が裁判傍聴、支援集会出席を心掛けてきた)、教区と連帯してきた。

 しかし、その取り組みが十分ではないことを反省している。

 皆様の一層のご理解を乞う。


 現在、神戸地裁で行われている「差し戻し第一審」(吉田昭裁判長)は、66回の公判を経て、実質審理が終了。

 判決は来春になる予定だという。

 麻田光広弁護士は、差し戻し審が確定しないと、前の第一審と同じように、控訴審・最高裁と延々と続けねばならない状態となり、超長期化を心配している。

 差し戻し審の最初の方の法廷で、麻田弁護士が、もし検察が「当たり前の人権感覚」を持っているなら、最初の第一審の無罪判決で終わっているはずである、と語調をあげて弁論したことが忘れられない。


 事件の概要はこうだ。

 1974年、西宮の甲山学園(知的障害の子どもの施設)で、行方不明の子が園内浄化槽から溺死体で発見された。

 警察は、殺人事件として保母の山田悦子さんを逮捕したものの、証拠はなく、釈放。

 検察は不起訴。

 ところが、4年経って、園児(知的障害児)から新たな証言が得られたとして、検察審査会の制度を利用して、再逮捕・起訴をした。

 同時に、国家賠償請求裁判で山田さんのアリバイを証言した元園長:荒木潔氏(教団 御影教会会員)と同僚を「偽証罪」で逮捕・起訴をした。

 一審の神戸地裁は、1985年、検察の主張を退け、無罪判決。

「偽証罪」も1987年、無罪。

 けれども、検察は控訴。

 大阪高裁は、神戸地裁に差し戻し、最高裁は山田さんの上告を棄却。

 1993年より、現差し戻し審が始まった。

 事件発生から23年。

 再逮捕・起訴から19年。


 弁護側は一貫して、冤(えん)罪を主張している。

 私は幾つかの文献を読み、何回か公判傍聴をして、特に元園長・荒木さんに対して「原記憶に基づかないものは偽証だ」と、検察に不利な証言を強権で圧殺する訴訟運びに不信を抱き、冤罪を確信、さらに司法の問題点を幾重にも感じている。

 問題は、冤罪を生み出す日本の土壌。

『「甲山」から見た日本の刑事裁判』(1995)などはその点を浮き彫りにしている。

 ともあれ、御影教会を中心とする「支える会」、教区の働きに連帯を続けたい。


(1997年4月27日 神戸教会週報掲載 
岩井健作)


(サイト記)本テキストから2年半後、1999年10月8日、山田さんの無罪確定。11月4日、元園長・荒木さんと同僚の無罪確定。事件発生から25年、裁判開始から21年が経過していた。


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1997年 週報

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