主の言葉が臨む《ヨナ 1:1-10》(1992 週報・本日説教のために)

1992.7.19、神戸教会
聖霊降臨節第7主日

(神戸教会牧師15年目、牧会34年、健作さん58歳)

 ヨナ書は旧約聖書の終わりの方、12小預言書の5番目に属する一つの物語です。

 アミッタイの子、ヨナという預言者はニネベに行くようにヤハウェ(主)の召命を受けます。

 しかし、それに服従することを拒み、ヨッパからタルシシに逃げようと試みますが、嵐の中、船から海に投げ出され、大きな魚に呑み込まれます。

 彼は魚の腹の中で祈り、救われます。

 そして、新しい召命に応じて、悔い改めの宣教をするためにニネベに行きます。

 この異教の街の住民は悔い改め、ヤハウェは裁きの言葉を取り消します。

 ところが、ヨナはこの異邦人に対する神の憐れみに憤りを感じます。

 しかし、トウゴマの木による奇跡的な経験を通して、自分が異邦人に対していかに心が狭かったか、そして神が全て生きている者に対していかに憐れみ深いかを教えられます。


 列王紀下14章25節の預言者はこの物語と直接関係がないようです。

 ”彼はハマテの入口からアラバの海まで、イスラエルの神、主がガテヘペルのアミッタイの子である、そのしもべ預言者ヨナによって言われた言葉のとおりである。”(列王紀下 14:25、口語訳)

 この物語には宗教史に周知のテーマが出てきます。

 例えば、神に選ばれた者にとって神の命令に従順であることがいかに難しいか、というテーマです。

 モーセ(出エジプト 4:13)もエリヤ(列王紀上 19:3-4)もまた、課せられた使命から逃避しています。


 ”モーセは言った、「ああ、主よどうか、ほかの適当な人をおつかわしください」。”(出エジプト記 4:13、口語訳)

 ”そこでエリヤは恐れて、自分の命を救うために立って逃げ、ユダヤに属するベエルシバへ行って、しもべをそこに残し、自分は1日の道のりほど荒野にはいって行って、れだまの木の下に座し、自分の死を求めて言った、「主よ、もはや、じゅうぶんです。今わたしの命を取ってください。わたしは先祖にまさる者ではありません」。”(列王紀上 19:3-4、口語訳)


 また、大きな魚に呑み込まれ吐き出されるというモチーフは、太陽神話に遡るものがあると言われます。

 この点については、(現在、教会生活講座で読んでいる)『キリスト教と笑い』(宮田光雄、岩波新書 1992年3月)の21ページ以下「神のユーモア・ヨナ物語」の項に、大魚の腹の中の出来事についての文化人類学的考察、精神分析学的解釈が紹介されています。

(サイト記)著者である宮田光雄氏を1992年度の神戸教会秋期伝道集会の講師にお招きするため、著書を読み合わせて集会準備が始まっている。


 ヨナ書の成立年代ははっきりしません。

 しかし、紀元前622年に陥落したアッシリアのニネベは遠い過去の時代の街として表現されています(ヨナ書 3:3)。

 ”そこでヨナは主の言葉に従い、立って、ニネベに行った。ニネベは非常に大きな町であって、これを行きめぐるには、三日を要するほどであった。”(ヨナ書 3:3、口語訳)

 異邦人に対するユダヤ教の不寛容が批判されていますから、イスラエルの歴史では「バビロン捕囚」前ではありません。

 紀元前2世紀には、ヨナ書は知られています。

 旧約学者は第2神殿の時代(紀元前5世紀)だと言っています。


 ヨナ書は、ユーモアに満ちた文学で、伝統的にはユダヤ教の不寛容に対する戦闘文学だと言われていますが、この通説に疑問を投げかけ、時代をもっと古く考え「死んだ方がましだ」(ヨナ書 4:3)と言わしめるような時代に生きる意味を与えた庶民的、民間伝承的、知恵文学的性格をもった独特の民衆文学だとする見方もあります(『ヨナ書注解』西村俊郎、日本基督教団出版局 1975)。

 ”それで主よ、どうぞ今わたしの命をとってください。わたしにとっては、生きるよりも死ぬ方がましだからです」。”(ヨナ書 4:3、口語訳)

 いずれにせよ、自分自分で読み取っていきたいと思います。

(1992年7月19日 週報掲載 岩井健作)


1992年度 兵庫教区「平和聖日」集会の案内

日時:8月2日(日)午後5時〜7時
場所:神戸クリスチャンセンター
主題:「統一協会の実態を暴く」
講師:桑原重夫(大阪・摂津富田教会牧師、日本基督教団 原理問題全国連絡会 代表)
主催:日本基督教団兵庫教区・社会部


7月6日(月)Y•S兄逝去、8日(水)岩井牧師司式による葬儀。

7月11日(土)・12日(日) 神戸教会 夏期特別集会。

7月14日(火)〜15日(水) 岩井牧師、教団常議委員会出席のため東京へ。

7月17日(金)〜18日(土) 石井幼稚園 お泊まり保育 石井幼稚園。

7月18日(土)S.C姉、S.M兄、岩井牧師司式による結婚式。

19日(日)礼拝後、教育部・伝道部合同委員会。
 秋期伝道集会(10月18日)の具体的準備開始。講師の宮田光雄氏(東北大学教授)について岩井牧師より紹介、案内や告知方法について決定。

7月21日(火)〜22日(水) いずみ幼稚園 お泊まり保育 六甲自然の家。

7月27日(月)〜29日(水)岩井牧師、松蔭女子学院短期大学宗教部キャンプの講師、神戸YWCA与島キャンプ場。


前週、夏期特別集会。

1992年度 神戸教会夏期特別集会

7月11日(土)神戸教会神学講座「今日聖書をどう読むか」
講師:青野太潮(西南学院大学教授)、参加者51名

7月12日(日)礼拝説教
「神の子たちの出現」
説教者:青野太潮(西南学院大学教授)、主日礼拝出席144名

7月12日(日)夏期特別集会 
礼拝後から18:30迄
「今日における『十字架』の意義」
講師:青野太潮(西南学院大学教授)、参加者74名


1992年 説教

1992年 週報

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