ミカ書 5:1-4について(1990 本日説教のために)

1990年12月16日、待降節(アドヴェント)第3主日、
神戸教会週報

(神戸教会牧師13年目、牧会32年、健作さん57歳)

ミカ書 5:1-4、説教題「小さい者だからこそ」岩井健作


ミカ

 旧約の預言者の一人。活動期間は紀元前725-700年頃、北イスラエル王国滅亡前後。

 エルサレムから35キロ南西の境界の地、ラキシの近くに居住。

 アッシリアのサルゴンやセナケリブ王らによる侵略で踏みにじられた故郷の農民や牧畜民との強い連帯感をもつ。

 また同国人の強者、搾取者と戦った。

 思想的には預言者アモスと似通う。(ミカ2:6、アモス2:12、5:11, 24、7:10-11参照)

 ミカは、悔い改めを知らず祭り好き(ミカ6:6以下)なサマリアやエルサレムの指導者に諸悪の根源を見た。

 預言者イザヤと同時代人。おそらく交流はなかったと思われる。


ミカ書

 預言者ミカに帰せられる書物。しかし、その後幾段階もの編集を経て成立。

 研究者によって18-19個に数えられる「最小の文学単元」を基としている。

 全体の構成は、1〜3章「裁きの告知」、4〜5章9節「約束」、5章10節〜7章7節「裁きの告知」、7章8節〜20節「約束かつ典礼文的な結語。

 確実にミカのものと想定できる言葉は、1章2〜11節、3章1〜12節、5章1節、5章2〜5節、5章10〜14節、6章1節〜7章7節。

 そこに見られるミカの思想として、「神の法」が貫徹されないところに、民の悲惨を見る。

 「シオン崇拝」(ミカ1:5、3:10以下)における偽りの安寧、大土地所有経済と隣人の私財横領(ミカ2:1以下、3:2b-4)、また裁判官や官吏や祭司の腐敗と堕落を鋭く批判する。

 ミカは、自分を神の側の権利の擁護者(6:1以下)として理解した。


クリスマスとミカ書

 新約聖書マタイ2章1節〜12節のイエス誕生物語に、その出生の場所に関連して、ミカ5章1〜4節の章句が引用されていることで、クリスマスに読まれる聖書テキストの一つ。

 マタイの引用の意図は、読者をして旧約聖書の体験をもう一度思い起こさせるところにある。

 世俗的な王に対して神的メシア(キリスト=救い主)が、辺境ベツレヘムに現れることの逆説的意義を説く。


 さて、この短い章句の中には、今日こそ心に留めねばならない聖書的概念が幾つも出てくる。

 「壁」「小さい者」「治める者」「わたしのために」「残れる者」「群れを養い」等々である。

 その中で、今日は特に「小さい者だが」という言葉をめぐって黙想を深めたい。

(1990年12月16日 神戸教会週報、岩井記)



1990年 説教リスト

error: Content is protected !!