「石井幼稚園・石井伝道所だより」
1987年12月 クリスマス号 所収
(神戸教会牧師・石井幼稚園代表役員 54歳)
”彼らは……黄金・乳香・没薬などの賜り物をささげた。”(マタイ 2:11)
クリスマスに園児と各家庭から捧げられたクリスマス献金が、石井幼稚園では毎年決まったところに継続的に送られていることは皆様がよくご存知のことです。
その一つに「特別養護老人ホーム 清鈴園」があります。この度、この清鈴園から一冊の本が出ました。
『清らかな鈴の音を – 15年の歩みから』(新教出版社 1987)。200ページの新書版の本です。
ヒロシマに落とされた原爆で身寄りを失い、年老いていく方々に憩いの場を作ろう、それは太平洋戦争に協力させられ、また、してしまった教会の小さな償いの鈴の音である、という趣旨で建設された老人ホームの15年の歴史が、その中には記されています。
当然ながら、建設に至るまでの苦労、そして神の導き、また運営のために辿った険しい道のりが記されています。
と同時に、原爆被爆者として入園された方々の被爆体験が載せられています。
「うめき、水を求め、手を伸ばしている。或いは声もなく座り込んでいる。『それは、まこと、生きて地獄を見る思いじゃった』」(p.93 崎元さんの話)
にあるように、感性を絶する出来事として語られています。
さらに、同じ被爆者でも、死体の処理から始まり、戦後40余年、治療の面においても差別されっぱなしの韓国・朝鮮人被爆者のことを、金信煥氏(在日大韓基督教会 広島教会牧師)が記しています。
そして一番終わりに「被爆30年目の私たちの声明」(入園者被爆者一同)が付録についています。
「……済んだことをいくら言ってみても仕方はなく、とにかく強く生きる他にはありません。こんなめに会うのは私たち一度だけでたくさんです……」
静かな調子が心を打ちます。
クリスマスに私たちが献げるものは、私たちの生活の絶対量から見たらほんのわずかです。
でも、祈りをもって献げるならば、その小さな献げものを神は用い給うでしょう。
幼な子たちの献げものはそのことの象徴です。
クリスマスにあたって、幼な子にならって私たちも献げる心を豊かにさせ給えと祈り求めていきたいと存じます。
(サイト記)上の写真は、2008年、広島の老人ホーム「廿日市(ふつかいち)高齢者ケアセンター」に杉原助さんを訪ねた際の一枚。健作さん75歳。杉原助さん81歳。社会福祉法人 西中国キリスト教社会事業団が運営する施設で、テキスト中の「特別養護老人ホーム 清鈴園」もその一部です。
冒頭の写真は、サンタクロースから健作さんが預かった子供たちへのプレゼント「木工のバス」。
『「老い」の断章』ー本の紹介ー(1993 清鈴園)