博士たちの贈り物《マタイ 2:8-12》(1985 神戸教会クリスマス燭火讃美礼拝・説教要旨)

1985年12月24日(火)、クリスマス燭火讃美礼拝、
神戸教会、午後7時半〜8時半、386名
(説教要旨は1986年1月5日週報に掲載)

(牧会27年、神戸教会牧師8年、健作さん52歳)

マタイ福音書 2:8-12、メッセージ「博士たちの贈り物」岩井健作
アンサンブル:シュピール•ドーゼ
合唱:神戸教会聖歌隊、奏楽:瀬尾千絵姉

 ”そして、家にはいって、母マリヤのそばにいる幼な子に会い、ひれ伏して拝み、また、宝の箱をあけて、黄金・乳香・没薬などの贈り物をささげた。”(マタイによる福音書 2:11、口語訳)


 人々が知らない間にイエスが誕生したということは暗示深いことです。

 「知らない間に」と言えば、信仰が芽生えることも、そのような性格を持っています。

 北畠八穂(きたばたけやお、1903〜1982)さんという児童文学者の生い立ちと作品について少し学びました。

 彼女は79年の生涯を、カリエスの病苦、離婚など苦悩のうちに終わった方ですが、作品がすごく明るいのです。

 その理由として、青森での幼少時代、自分でも知らない間に、祖母のキリスト教信仰から影響を受けたことが挙げられます。

 北畠さんの短編に『雪とふってきたエス様』という作品があります。

 ある日、材木商を営むお父さんは、刑余者(刑務所・拘置所出所者)のスズキという人を自分の工場で働いてもらうことにします。

 その人はそこに居付き、6歳の娘タミコとその祖母を長屋に呼び寄せます。

 主人公のマコは9歳で、タミコと友達になっていきます。

 クリスマスの日、マコはタミコとその祖母にプレゼントをします。

 「なんで?、なんで?」と問う二人に「エス様の愛よ、親切。今日はエス様の生まれた日、おたがい、親切をプレゼントする日」とマコは答えます。

 しばらくして、タミコはマコの好きな雪をプレゼントするのです。

 ストーブのぬくみで溶けた後の冷たい手を吸い、手を両ほっぺたに押し付けて、マコは「ほら、タミコちゃんのくれたエス様、マコにしみ込んじゃった」と言います。

 その夜、マコはこんな言葉を記します。

 「エス様は、雪と降ってきて、手に溶けて、マコとタミコに、しみるクリスマス」

 美しい作品です。

 彼女の人生の部分部分では信仰は決心や決断でしょうが、長い人生では、人の思いに先立って先行する《神の愛》が知らない間にしみ込んでいると感じさせます。


 さて、マタイ福音書がイエス誕生の記事の中に、東の博士たちがまずイエスを拝したという物語を入れたのも、「神」は自明のことと思っていたユダヤ人たちへの批判だったのではないでしょうか。

 と同時に、自分の国の地位にすら安住しないで、宝(黄金=経済、乳香=文化、没薬=福祉)を本当に活かすことの出来る方に捧げていくことへの感動を訴えているのです。

 「ひとみな眠りて、知らぬまにぞ、み子なるキリスト生まれ給う」(讃美歌 115番2節)

 讃美歌に歌われている通りです。

 知らぬ間に地上に宿り給うイエスが、私たちの心にも宿るように、祈り求めてまいりましょう。

(1985年12月24日 神戸教会 岩井健作)


1985年 説教・週報・等々
(神戸教会7〜8年目)

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