引用:柏木哲夫氏「現代人の不安」《ヨハネ 14:27》(1982 週報・説教要旨・秋期伝道礼拝)

1982年10月17日、聖霊降臨節第21主日、
1982年 神戸教会 秋期伝道礼拝
説教要旨は翌週の週報に掲載(文責:飯謙伝道師)
同日発行、神戸教會々報「旧約聖書と私たちの教会

(兵庫教区総会議長、神戸教会牧師5年目、健作さん49歳)

1982年 神戸教会 秋期伝道礼拝
柏木哲夫氏「現代人の不安 (ヨハネ 14:27)」:152名
礼拝後、囲む会「ホスピスの働き ー 生を支えるケア」:78名

柏木哲夫先生(週報での紹介)
 1939年年、神戸市出身。1965年、大阪大学医学部卒、ワシントン大学医学部留学を経て、1972年より淀川キリスト教病院(大阪市)に勤務、現在(1982年)同病院精神神経科部長、日本メノナイト•ブレザレン教団 石橋教会 会員。


「現代人の不安」柏木哲夫(説教要旨は飯謙伝道師による)

ヨハネによる福音書 14:27、説教題「現代人の不安」柏木哲夫氏

”わたしは平安をあなたがたに残していく。わたしの平安をあなたがたに与える。わたしが与えるのは、世が与えるようなものとは異なる。あなたがたは心を騒がせるな、またおじけるな。”(ヨハネによる福音書 14:27、口語訳)


 現代は「不安の時代」といわれています。

 「無目標の時代」ともいわれています。

 宗教学者は「神なき時代」と言ったりします。

 精神科の医師である私は、毎日心に悩みをもつ人を診察していますが、その中で、人間の心に不安が起こるとさまざまな不都合が起きるということを体験してきました。

 人間の不安はどこから来るのでしょうか。

 一般に(1)目標の喪失(2)人間関係の変化、という二つの理由が提示されています。

 近年、全国的にうつ病が増加する傾向にありますが、以前の日本では、あまり見られないことでした。

 そこで、少し日本の歩みをふり返ってみましょう。


 戦前、わが国の目標は「富国強兵」でした。

 その結果戦争に突入、やがて敗戦を迎え「祖国復興」、「経済成長」と移りました。

 しかし、目標が目標でなくなる日が来た。

 それが1973年のオイルショックです。

 これを機にうつ病が増加し始めます。

 日本国民全体の目標をつかめなくなった時代の到来です。


 現代が、国民全体のレベルで「無目標の時代」であることは明らかです。

 しかし、個人のレベルでは異なるでしょう。

 私たち一人一人には、社会を動かす力はないかもしれません。

 けれども、私たちは人生の目標をもつことにより、自分の生を全うすることができるのです。

 「人生の目標」と考える時、私は「あなたがたは……何が神の御旨であるか、何が善であるかをわきまえ知るべきである」(ロマ 12:2)という聖句を思い出します。

 ”あなたがたは、この世と妥協してはならない。むしろ、心を新たにすることによって、造りかえられ、何が神の御旨であるか、何が善であって、神に喜ばれ、かつ全きことであるかを、わきまえ知るべきである。”(ローマ人への手紙 12:2、口語訳)

 何が善か、神の御旨かを求めることを私たちの人生の目標とするならば、必ず神の平安が臨むと考えるのです。


 病院には色々な方が患者として入院してこられます。

 「財産」や「地位」という衣を着た方も多くおられます。

 この衣は、この世的な平安を与えてくれるかもしれません。

 しかしひと度病気となったなら、この衣が何の役にも立たないことを教えられるのです。

 やがてなくなるものだからです。

 そのような時、一番支えになるもの。

 それは私の心の中にあるしっかりしたもの - それは信仰である、と思います。


 私たちの目標とは、永遠に喪失しないもの、すなわち神との関係にある中で見い出されるものでしょう。

 主イエスは、「世が与える平安とは異なる」(ヨハネ 14:27)ものを私たちに与えようとしておられます。

 私たちの仕事は、その平安を受け入れることだけなのです。

(1982年10月17日 柏木哲夫氏説教/24日週報掲載説教要旨 飯謙伝道師)


1982年 説教

1982年 週報

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