幼児教育多様化への願い − 102条の存在の意味 −

○ 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)
第百二条 私立の幼稚園は、第二条第一項の規定にかかわらず、当分の間、学校法人によつて設置されることを要しない。

神戸教会いずみ幼稚園園長 岩井健作、発表誌不明

 「102条園」の事情について重々ご存じで、これらの園のためにご努力戴いている、県当局や県会議員や幼稚園関係者には申し訳ないのですが、この冊子を初めて手にされる方には、「102条園」という言葉に馴染みがない方もおられると思いますので、年毎の冊子の繰り返しになりますが、その由来に触れさせて戴くことをお許し下さい。

 日本の現在の幼児教育・保育のシステムは、0歳児から就学までの厚生省管轄で福祉が主眼の保育園と3歳児から就学までの教育が主眼の文部省管轄の幼稚園に分かれています(それぞれの管轄の子供の数は、年齢層の範囲が異なりますが、およそ半々ですが、予算は、厚生省が文部省の10倍ほどと言われています)。乳幼児施設は国公立と私立に分かれますが、私立の中には、保育園や幼稚園の形態をとっていながら、非(未)認可の施設や「プレイセンター」といわれる親子の自主活動などもあります。それはそれなりの社会的必然性、あるいは乳幼児教育への理念に立って活動が営まれています。

 さて私立の幼稚園の方は、ほとんどが認可園です。認可とは、1947(昭和22)年制定の学校教育法によるものです。それまでは、幼稚園令によるものでした。学校教育法は、第二条で「……学校法人のみが」幼稚園を設置することができると定めていますので、この法律よりも古くからあった園も、行政指導により、新しい学校法人の設立に切り換えていきました。この法律は、設置基準を明確にし、幼稚園運営に公的助成を行う手立てとなりました。しかし、古くから都心部に位置したりしていて設置基準に合わなかったり、助成を受けるより今までのままの経営にメリットがあったり、財産の学校法人への寄付に支障があったり、また教育への理念から新しい法律になじまない形態の幼児教育を行っていたりしているところがあり、学校法人化が急速には進みませんでした。そこで法律の改正が行われ、1949(昭和24)年に、第102条に「当分の間、学校法人によって設置されることを要しない」ことが付け加えられました。以来50年余の間にはいろいろ曲折はあるのですが、この102条を根拠に、非学法のまま運営されてきているのが「102条」園です。学校教育法に従えば法人化が当然という前提があります。しかし、現実に幼稚園を選ぶ親にとっては、親の教育理念にあっていて、子供に相応しいこと、そして地域生活圏であることなどから、学法か非学法かが問題ではありません。助成も本来子供自身になされるべきとの観点も活かされて、経費の公私格差是正の大儀で個々人への就園助成もなされる制度もできて、102条園も何とか生き続けてきてはいます。私立幼稚園(全日私幼)は曲折はありましたが102条園を含めて幼稚園問題を担うという合意で運動が進められてますので、幼稚園運営の本筋ではないと、一概に片付けられるものではありません。しかし現実は、102条園がその苦境を叫ばなければ、その存在が忘れられる様な状態です。助成は各都道府県によって違います。それは、運動の是非にも由来しています。

 国の助成は、本来子供の成長に対してなされるべきだとは、子供の人権の視点から言えますが、それには、乳幼児期の保育形態はその子供の成長の権利、それに応える親の養育の責任に従ってなされるべきことが認められるべきであります。勿論、親の子育てへの倫理性の水準が要求されます。国は一方で、親が選ぶ保育形態の多様さを認めつつ、他方でどの子供にも同じように関わる制度保障をしていく責任がある様な気がいたします。

 最近その思いを深くしたのは、ニュージーランドの就学前教育についての情報を知ったことによります。「ニュージーランドでは、1980年代後半から大規模な教育改革が行われ、就学前の子どもに関する制度もまさに大変動の時期にあり、その内容は日本にとっても大変示唆に富むものであった。例えば、日本では2000年4月より認可保育所の運営に企業の参入が認められることになったが、ニュージーランドではすでに1980年代後半に、営利企業立の保育所を利用する子どもにも補助金を出すという改革が行われている。

 改革後のニュージーランドの就学前の子どもに関する制度の特徴としては、多様性と公平性が挙げられる。ニュージーランドでは就学前に関するサーヴィスをすべて教育省所轄とし、その種類も幼稚園、保育所のほか、家庭で子供を預かる家庭保育サーヴィス、親によって運営されるプレイセンター、マリオの文化を土台にした幼児教育施設コハンガレオなど、実に多様である。同時に政府の補助金は子ども一人当たり一時間当たりのレートが定められ、どのサーヴィスを利用しても受けられる補助金に違いはないという公平な仕組みになった」(『日本ニュージーランド学会誌』1999年12月号、池本美香「プレイセンター50年の歩みと今後の可能性」)この論文で、プレイセンターが親たちによって運営される幼児教育施設、親と子供が一緒に楽しい時間を過ごす活動で、50年の歴史があり、保育所(61,597人)、幼稚園(49,756人)、プレイセンター(17,403人)、コハンガレオ(13,505人)、プレイグループ(12,770人)<1996年>と、かなりの利用者を持っていることを知った。ニュージーランドも女性労働力の必要な国であるが、子育てに関して、親の自立性の高さを感じ取ることができる。

 日本における102条園の存在は、限り無く学法園の形態に近付くのではなく、親の協力も引き出して、保育形態の多様さを証しする方向へと進むことにある様な気がする。小規模、親の保育への参加、地域・ボランティアの協力、さらに国・行政のもう少し積極的な(公平性で学法並、あるいは公立との格差是正、幼保一元化への政策転換)支援、などを引き出しつつ、進んでいきたいと思う。それにしても、30名台の園児数での喘ぎは、なかなかつらい。