米軍基地のある国は独立国か – 岩国そして沖縄の現実

1、私は山口県の岩国に「牧師」として13年間在住しました。岩国には三つの顔があります。一つは、古い城下町の顔です。錦帯橋という有名な橋がある観光地です。 もう一つは工業都市の顔です。帝国人絹、東洋紡、三井石油、山陽パルプなどの大工場が並んでいます。三番目は、米軍基地の街です。米軍の海兵隊基地です。ベトナム戦争の時にはここから米軍はベトナムの爆撃に出撃しました。 その時に、様々な活動をしたことや体験したことなどを、一冊の本に纏めました。『兵士である前に人間であれー反基地・戦争責任・教会』です。その表紙には錦帯橋のスケッチを画きました。基地の街では、いろいろなことを経験しました。

2、こんな経験があります。電話がかかって来ました。女性の声です。「キリスト教は悪魔を祓ってくれますか」「うちの人が西洋の悪魔に取り憑かれている」。事情を聞いてみると、基地の兵隊を相手にしている女性で、オンリーといわれる特定の相手と同棲している人。その兵士がベトナムの戦場から帰ってきて、私の推察では戦場でよほどひどい経験をして、「精神錯乱」を起こして、気が狂っている様子です。取り憑かれているのが、西洋の悪魔なので、「教会」に電話という事になったらしいのです。しばらく事情を聞いて、悪魔が出ていくようにお祈りをするから、あなたも一緒に目を閉じて祈って下さい、と申しました。最後に「悪魔よ、出て行け!」と3回言ったら、その女性は「気が楽になった」と言って安堵の声が聞こえました。また悪魔が取り憑いたら、「川下のあなたの家まで行ってあげるから、電話をして下さい」、と言っておいたら、その後電話がないので、収まったようでした。基地の街にいると何があるか分かりません。こんなエピソードは話せばきりがありません。

3、レジュメに移ります。日本の米軍基地は、三沢(青森県)、厚木、横田(東京都)、横須賀(神奈川県)、岩国(山口県)、佐世保(長崎県)にあります。沖縄県は、嘉手納、普天間です。沖縄は国土の0.6%に全基地の73.8%があります。その他通信基地、所沢に、また通称「象の檻」と呼ばれている「沖縄楚辺基地」があります(衛星通信からの電波を傍受するものです)。神戸の六甲山山上は撤去運動もあり、今は撤去されています。米軍は日本には陸空海、合わせて3万8千人の将兵がいます。関係者は別です。

4、米軍基地の法的根拠。『日米安全保障条約』です。1957年、サンフランシスコ平和条約と平行して締結され、日本に米軍基地を置くことを定めています。これに基づいて「日米地位協定」(米兵、軍属の法的地位を決めている。1960年)があります。特に17条は公務中の犯罪については、米軍当局が裁判権を優先的に行使するとあります。日本に警察権がないのです。『沖縄・米兵による性犯罪(1945-2016)』(「基地・軍隊を許さない女たちの会」編集)は性犯罪の多さを記録しています。「婦女暴行」事件で米兵を逮捕しても米軍に引き渡さなければなりません。裁判権なしの状況です。これで「独立国」と言えるだろうかと私には思えます。沖縄県は17年ぶりに「見直し案」(米軍施設外による事件事故の場合、日本の捜査当局が米側財産を差し押さえる権利を明記すること)を要求しています。沖縄国際大学へのヘリコプター墜落事故(2008/8/13)では米軍側が日本警察を入れなかったのです。17年ぶりに沖縄県は独自の「日本側捜査主導の見直し案」を政府に提出しました(東京新聞 9/8)。

5、岩国の現状。騒音対策の「基地沖合移設」(愛宕山を削る)の結果が基地の拡大につながり、愛宕山には「将校用高級住宅」が建設された。市街地での米機訓練急増し、騒音(90デシベル)がひどい状況です。市への苦情155件(2017/7/10、1998年以後最多)。市長は「空母艦載機61機の移駐を承認」、駐留軍は、家族を含めて約1万人(岩国の人口は10万)。市街地上空、夜間を飛ぶな、など46項目を自治体が申し入れしたが、無視。住民憤る。「日本政府、米国に毅然とした態度を示すべき」(岡村寛)(東京新聞 7/24)。

6、沖縄県と米軍基地問題。辺野古基地建設阻止の決意明確な翁長雄志知事が当選(「辺野古埋め立て」を推進した、前知事仲井真氏に10万票差、オール沖縄の確立 2014年)前知事埋め立て承認を取り消した(2017/3/4)。「沖縄の危機は日本の危機」「辺野古に基地は作らせません」「辺野古から日本を変える」と発言。「普天間の辺野古移設」強行中止へと知事が提訴して、裁判で争われたが、最高裁で敗訴した。司法が行政を追認したので、現在、建設工事は進行中。「民意の苦戦」です。米国に追従する政府。憲法9条に「安保」を凌駕させては、「平和憲法」を土台とする国の基本は揺らぐ。「米国追従」は、真の「独立国」であるのかと問いたい。沖縄の「島ぐるみ反基地闘争」の元祖では、何と言っても、阿波根昌鴻(1901-2002)さんの闘いを覚えねばなりません。1950年代『銃剣とブルドーザー』で「土地強奪」を行った米軍に対して、伊江島で「非暴力」の闘いをした。1995年の民衆蜂起(少女暴行事件 8万5千人抗議)以降、2017年 名護の辺野古移設に反対する県民大会(8/12、那覇市奥武山公園 4万5千人)まで連綿と闘いは続いています。これは沖縄の 構造的差別(安保を沖縄にしわ寄せする)への闘い、自己決定権の行使である(新崎)と言えます。全日本、世界の闘いに発展するかが焦点。知事、議会議長、沖縄選出の参議院議員など訪米で訴える。

7、辺野古基金(基地建設阻止運動支援)。沖縄財界、有識者、共同代表として、呉屋守将 8人。本土からは共同代表として、鳥越俊太郎、宮崎駿、佐藤優などが参加。現在(2017/9/13)、6億3千5百万円(目標当初は3億5千万、現在7億に変更)。件数11万件。反対運動団体、運動支援の自治体に配布、バスの運行、辺野古基地阻止の大きな力となる。

結論。「沖縄の民意」への「祈り」を。勝利の日まで(We shall overcome)。「基地すべて押しつけおかばおのが身は安泰なるか日本(やまと)の国は」中村文子(沖縄。教師 4年前99歳で他界、2017/5/17 朝日新聞)。

  「沖縄の珊瑚の悲鳴潮に乗り」
  「沖縄を泣かせて平和は来ませんよ」 
   佐野仁(74)(2017/6/23 東京新聞 平和の俳句)

   参考書
   新崎盛暉『日本にとって沖縄は何か』岩波新書 2016
   翁長雄志『戦う民意』角川書店 2015
   岩井健作『兵士である前に人間であれ』ラキネット出版 等々


山口県岩国市岩国1-17-29 日本基督教団 岩国教会
阿波根昌鴻
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岩井健作