神と富(2008 礼拝説教・マタイ・山上の説教)

2008.7.20、明治学院教会(122)聖霊降臨節 ⑪

(単立明治学院教会牧師 4年目、健作さん74歳)

マタイ 6:19-24ルカ 12:33-34

”「あなたがたは地上に富を積んではならない。そこでは、虫が食ったり、さび付いたりするし、また、盗人が忍び込んで盗み出したりする。富は、天に積みなさい。そこでは、虫が食うことも、さび付くこともなく、また、盗人が忍び込むことも盗み出すこともない。あなたの富のあるところに、あなたの心もあるのだ。」”(マタイによる福音書 6:19-21、新共同訳)

”「体のともし火は目である。目が澄んでいれば、あなたの全身が明るいが、濁っていれば、全身が暗い。だから、あなたの中にある光が消えれば、その暗さはどれほどであろう。」”(マタイによる福音書 6:22-23、新共同訳)

”「だれも、二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛するか、一方に親しんで他方を軽んじるか、どちらかである。あなたがたは、神と富とに仕えることはできない。」”(マタイによる福音書 6:24、新共同訳)



1.「天に宝を積みなさい」という小見出しと共に、ルカの並行箇所(12:33-34)が記してあります。両福音書の元の資料は「イエスの語録資料(Q)」です。

 この資料を残した人々(教会・教団)はイエスの言葉を大事にする社会層の人々でした。

 他人を踏み倒してでも金儲けのことしか考えていない金銭感覚の人間(富裕層のある人々)は、富を絶対化し、富が己の「神」になっている人たちです。富のためには、人を人とも思わないので、人間の連帯は生まれません。

 また、逆にその日の生活に事欠く貧しくされた層の人たちは、支え、助け合わなければ生きてゆけない人々、イエスが「貧しい人々は幸いである」(ルカ 6:30)と言った人たちです。「富か神か」を思考する余裕はありません。この人たちはイエスを信奉して、病気の治癒を求めた最下層の人たちであり「奇跡物語」などの伝承の担い手でした。

 とすると、富に対する人生の処し方の良否が、言葉や思考として問題になる社会層は、中間層の人々です。その人々によって「富と神」のテーマは伝承されました。

2.「言葉の文化」の担い手(Q)は、自分たちの生活に自己省察を加え、富の問題を、所有をめぐる思い悩みや、富をどのように用いるかという決断の問題として考えた人たちです。

 富を絶対化できないために、悩み、迷う。このことは極めて人間的なことです。それを、富を人間的繋がりを弱めるネガティブ(消極的)な方向に考えないで、人間が連帯してゆこうとするポジティブ(積極的)な方向に考えるかが、ここのテキストの問題です。

3.19−21節。

”「あなたがたは地上に富を積んではならない。そこでは、虫が食ったり、さび付いたりするし、また、盗人が忍び込んで盗み出したりする。富は、天に積みなさい。そこでは、虫が食うことも、さび付くこともなく、また、盗人が忍び込むことも盗み出すこともない。あなたの富のあるところに、あなたの心もあるのだ。」”(マタイによる福音書 6:19-21、新共同訳)

「富を天に積む」はルカの並行箇所12:33と比べると、ルカは「思い煩うな」の文脈に富を結びつけ、ルカの神学の特徴を示しています。マタイは「禁止命令」(地上に富を積んではならない)を加え、「積むな」(19節)「積め」(20節)「富は心だ」と3文節の構成を作り、ユダヤ教知恵文学伝承の名残を留めています。

 イエスをユダヤ教ラビと同様に普遍的真理を説く知恵の教師像によって描くのは「Q教団」の思考を反映しています。

4.22-23節。

”「体のともし火は目である。目が澄んでいれば、あなたの全身が明るいが、濁っていれば、全身が暗い。だから、あなたの中にある光が消えれば、その暗さはどれほどであろう。」”(マタイによる福音書 6:22-23、新共同訳)

 直接富に関係のない格言(ルカ 11:34-36)を導入。「澄む(ハプルース)」は「物惜しみしない」。ひたむきさを目で表現することで、次節の「決断」に繋げています。

5.24節。

”「だれも、二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛するか、一方に親しんで他方を軽んじるか、どちらかである。あなたがたは、神と富とに仕えることはできない。」”(マタイによる福音書 6:24、新共同訳)

 富を決断の問題として迫ります。富と神は、仕えることの裏表です。

 富の絶対化は連帯的人間を否定します。連帯のために捧げられ、用いられる富と共に神はいまし給うことを、わずかでも託せられた「富」を前に思考し決断していきたいと思います。

6.阪神大震災の時の経験。富の相対化と献金の証し。

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