新たなる戦時、”戦争責任告白“の限界を乗り越えて(2008 講演レジュメ)

2008.2.11(月)2・11信教の自由を守る栃木県集会
於日本バプテスト連盟 宇都宮キリスト教会
主催 栃木県政教分離を守る会

(明治学院教会牧師、74歳)

はじめに

 田上中さんとの出会いは「止めよう戦争への道!百万人署名運動」を通して。

1.多少の自己紹介

1−1.世代

 太平洋戦争時集団疎開組。戦後、父親の農村開拓自給伝道の生活で「サツマ芋」と「麦」に出会ったことが後のキリスト教理解を方向付けた。

 神学校卒業以後、任地。

 広島(原爆の無差別殺戮、核廃絶)
 呉(海軍の街の復興)
 岩国(米軍基地、安保体制の自覚、ベトナム反戦市民運動への参加)
 神戸(近代化と沖縄。弱者を襲った地震と国家の非道)

1−2.日本基督教団との関わり

「日本基督教団戦争責任告白」(別紙資料参照)と自分(「若手教職からの提案」『資料集』p.332)

2.国家との関わりを巡って日本のキリスト教の二つの流れ

2−1.前史

 天皇制絶対主義国家理念の枠内での教会。主流における伝道・ 布教・教会形成の第一義目的の自己貫徹化。傍流における国家と対峙・反戦 を生きた人々(柏木、内村、矢内原、など)。

2−2.日本基督教団の成立

 国家戦争政策に協力(余儀なく、積極的にの幅あり)。宗教団体法による国家の宗教統制の中で、各派は「教団」により存命を計る。

2−3.敗戦以後

 根本的反省を経ないまま、占領軍の宗教政策、及びキリスト教ブーム、教勢の拡大志向〜新日本建設キリスト運動の展開。

1951年、日本基督教会の離脱。および各教派の離脱。
1954年「教団信仰告白」の制定。
① 教会中心の流れ
② 朝鮮戦争(1950)を契機とするキリスト者平和運動(1951)
「社会大衆への福音の浸透」(1956)可決
「教団宣教基本方策」(1961)(体質改善論『日本基督教団史資料集 第五篇』pp.187ff. 参照)の流れとの二分化。

2−4.戦責告白

「第二次大戦下における日本基督教団の責任についての告白」(1967) 

「戦責告白」を巡る賛否の収集としての「五人委員会」答申。

(その後、改革派、バプテスト連盟、日本基督教会、バプテスト同盟、ナザレン、福音ルーテル、NCC、ホーリネス、明治学院などの戦争責任告白が出る) 

3.「福音理解」をめぐっての「対話」か「正常化」か

3−1.万博への参加およびキリスト教館建設に反対する運動(1969)

 日本基督教団への問題提起(差別・人権への個別課題との取り組み。教師検定。会議制)とその正常化路線との確執。教団成立・信仰告白制定などへの歴史(救済史歴史観、解釈学的歴史観)理解を巡る対立が顕となる。

3−2.「信条・信仰告白」「教義学」から福音宣教(伝道・布教)の方向

 個別課題(被差別者・被抑圧者、反権力、反天皇制、靖国、性差別、沖縄、在日)から苦難の共有をする宣教の方向との対立(いわゆる「教会派」「社会派」の色分け)。聖書理解の多様化(聖書学の成果の援用など)。

3−3.沖縄キリスト教団との合同(1969)とその「とらえなおし」可決(1978)

「合同」の実質化の一つである「教団名称変更」(特設委員会案、後に沖縄教区議案)は継続審議であったものを第33回総会(2002)で廃案とされる。

 個別課題の宣教への否定決議(「靖国・天皇制情報センター」「性差別問題委員会」の廃止)。この間、神学的対話より教会政治主義の表面化が残念。

4.戦争の現在

4−1.状況

 アフガニスタン、イラクへの武力攻撃とアメリカのグローバリゼーションによる「戦争」の意味の変化。国連の弱体化。先制攻撃、メディア軍事翼賛体制、新自由主義経済による臆面なき再開発、軍事経済と軍事文化の普遍化。住民(レジデンツ)への管理体制、科学の軍事技術化。

4−2.日本の状況

 アメリカのグローバリゼーションの一環としての経済民生政策(格差社会、貧困率の増加、高失業率、非正規雇用の増大と恒常化、正規社員の過重労働、フリーター、労働組合の弱体化、ホームレス・自殺者の増加、中小企業倒産、福祉・医療、地方自治の弱体化と国家管理、増税)、米軍再編による「米」軍事戦略への自衛隊の一元化。

「安保」の意味の変化(集団的自衛権体制、基地の迎撃ミサイル化、有事法整備強化等)、軍事化を下支えするナショナリズムの高揚、メディアの自己規制、住民の国家管理(住民動員による司法、治安の強化、住基ネット、個人情報保護法、外国人労働者管理、共謀罪制定のもくろみ等)。

 教育の管理(教基法の改悪完了、選別教育、「日の丸・君が代」の強制から国家主義教育管理)。

4−3.カウンター・グローバリゼーションとしての平和・反戦・反差別運動

 イラク反戦運動の世界規模の連帯(2003年2月15日現在、世界600箇所1000万人)。

5.状況の中の教会としての小さな実践

5−1.日本基督教団神奈川教区の場合

「『戦責告白』40年を覚える決議」(資料2)。

 集会(平和集会)2007年11月17日実施(140名参加)

5−2.個別課題に取り組む教区・教会

 (神奈川教区)社会委員会(靖国・天皇制問題小委員会、基地・自衛隊問題小委員会、部落差別問題小委員会、核問題小委員会、社会福祉小委員会、多民族共生をめざす小委員会)。

 性差別問題委員会、寿地区委員会。

 沖縄交流委員会。

 個別課題に取り組むことが、人間と社会の現実の苦悩を共にする福音(宣教)の在り方。福音の身体性。

5−3.国家、組織、個人の戦争への関わり

① 実行者、② 加担者(無関心を含む)、③ 批判者(消極的、積極的)、④ 被害者。教会は積極的批判者であり続けたい。 

5−4.スローガン

「憲法を変えるな」「9条は世界遺産、平和の魂」「日の丸・君が代の強制を止めよ」「思想、信教、表現の自由を奪うな」などの声を上げていきたい。