1998.11.8、神戸教会、降誕前 ⑦
(牧会40年、神戸教会牧師 20年目、健作さん65歳)
エレミヤ 6:13-21
”「身分の低い者から高い者に至るまで
皆、利をむさぼり
預言者から祭司に至るまで皆、欺(あざむ)く。
彼らは、わが民の破滅を手軽に治療して
平和がないのに、『平和、平和』と言う。
……しかも、恥ずかしいとは思わず
嘲(あざけ)られていることに気づかない。”
(エレミヤ書 6:13-15、新共同訳)
エレミヤの初期預言の言葉だ。ユダ王国の首都エルサレムに向かって語られている。
「身分の低い者から高い者に至る」という訳は気になる。
「小より大に至る」(関根正雄訳)の方がよい。
社会機構での役割の違いを言う。今日では「吏員より市長に至るまで」ということか。
「和歌山市長を逮捕、秘書課長も」(11月3日火曜日)。文化の日の新聞各紙第一面。
「政治資金規正法違反逮捕 中島洋次郎・衆議院議員」
「法相、利害絡む事件で指示」
など、近日の新聞をたどれば、これが「私たち」の生きている「国」「民族」なのだということを思い知らされる。
「手軽に治療」(エレミヤ 6:14)。
テレビニュースからは「国民一人3万円の商品券を配ったらよかろう」などとの政策が放映される(11月4日)。
こんなことで、大切な週報の紙面をつぶしたくないが、10年経ってエレミヤを再読した時との比較のために、と思う。
このあたりに適格な批評を加えているのは加藤周一氏「夕陽妄語」(朝日新聞 98.10.21)、「文化」の「むだ遣い体制」の一文である。
中央政府につき論じた後、加藤氏は次のようにいう。
”地方には、例えば神戸空港計画というものがある。……どれほど利用されるのか……どれほどの税金を投入するのか、その見積もりは全く明瞭でない……住民投票を求める市民運動が起こったのは当然である。”
そして次のように結ぶ。
”思えば、日本国は、軍事大国として失敗した。今では経済大国として弱点を曝露している。その次に文化的貧困化の時代が来ないことを、私は願う。”
エレミヤ書 6章13節-15節の注解。「鎮静剤では疾患は癒やされない」(『エレミヤ』、A.ヴァイザー(Artur Weiser:ATD旧約聖書註解監修者))は暗示に富む。
今朝の箇所の本題は次の16-17節にある。
”主はこう言われる。
「さまざまな道に立って、眺めよ。
昔からの道に問いかけてみよ
どれが、幸いに至る道か、と。
その道を歩み、魂に安らぎを得よ。」
しかし、彼らは言った。
「そこを歩むことをしない」と。”
(エレミヤ書 6:16、新共同訳)
「幸い」(6:16)は訳が甘い。
「救」(A.ヴァイザー)、「よき道の所在」(関根正雄)の方がよい。
ここでは二つのことが言われている。
一つは「歴史と伝統」(神との関係・律法)。
「安らぎ」はマタイ11:29に引用あり。
第二は「預言者の働き」(17節「見張りを立て耳を澄まして角笛の響きを待て」)。
”わたしは、あなたたちのために見張りを立て
耳を澄まして角笛の響きを待て」と言った。
しかし、彼らは言った。
「耳を澄まして待つことはしない」と。”
(エレミヤ書 6:17、新共同訳)
エレミヤ書の言葉を、今の時代に、自らの「肉」とするまで、読んでいきたい。
(祈祷)
神さま
私たちは、歴史の中に、主イエスの歩みを示されて、それに依り頼んで生きるようにという、信仰への促しから目を逸らしてしまう弱い者です。
しかし、あなたは、良い道がどれかたずねよ、と言われて、私たちの目をもう一度、根源的なところに移して下さいます。
どうか、私たちの信仰の歩みを守って下さい。
それゆえに、この時代を生き抜いていく力をお与え下さい。
主イエスの名によってお願いします。アーメン。





