「石井幼稚園・石井伝道所だより」第44号、1991年12月 クリスマス号所収
(健作さん58歳)
愛には恐れがない ヨハネ第一 4:18
「サッちゃんはね」の童謡の作者でしられる阪田寛夫さんの作品に『桃次郎』というお話があります。
桃次郎は桃太郎の弟ですが、兄とは反対に、よわむし、寒がり、ひねくれやで、家から追い出されて鬼ヶ島に行かされます。鬼ヶ島には桃太郎に殺された鬼たちの、子どもや、おくさんや、恋人しか残っていないのに、こわがって逃げ出すものだから、鬼のお姉さんにつかまってお尻をぶたれてしまいます。「鬼を殺すのも、鬼をこわがるのも、どちらもひどくまちがっているわ」と鬼のお姉さんが言っているのは、印象的でした。
「殺すのも、こわがるのもまちがっている」という言葉から皆様は何を連想されるでしょうか。
戦争、いさかい、争い、対立、異文化、異民族などが私には思い浮かびました。そうして、自分が戦争やいさかいや、対立にまきこまれたり、異なった文化や民族に出会ったとき、桃太郎にも桃次郎にもなってはいけないのだということを教えられました。
私たちの心の中には桃太郎になりたい心や桃次郎になってしまう心の両方があります。それを戒めていくことが、人と仲よくしていくことだと感じました。
さて、イエスさまが生まれたのは、すべての人が桃太郎にも桃次郎にもならないで、みんなが横ならびになるためでした。
ところが世の中には偉い桃太郎のような人がいっぱいいて、征ばつだといって、イエスさまを十字架にかけて殺してしまいました。それでも、人々の心の中にイエスさまが、いのちとして生きているので、そこまでは殺せませんでした。
横ならびで仲よくする時の力として、イエスさまの誕生をお祝いするのがクリスマスではないでしょうか。
岩井健作(神戸教会牧師、石井幼稚園代表役員)