第1コリント15章38節について(1991 本日説教のために)

1991年4月7日、神戸教会週報、復活節第2主日
この日の説教「死ななければ生かされない」コリント第1 15:35-49

(神戸教会牧師14年、牧会33年、健作さん57歳)


パウロについて

 初期キリスト教の中心的宣教者・使徒。熱心なユダヤ教徒としてキリスト教徒を迫害したが、回心。3回にわたり地中海世界への伝道旅行で各地に有力な教会をつくる。その名を冠する12通の書簡がある。真筆は7つが通説。

 教会文庫に、最近M兄より次の書籍が寄贈された。

『使徒パウロ』(佐竹明、NHK出版、1981年1月)
『天幕づくりのパウロ ー その伝道の社会的意義』(R.F.ホック、笠原義久訳、日本基督教団出版局 1990年1月)

 階下小講堂書架には『新聖書大辞典』『旧約新約聖書大辞典』『キリスト教大辞典』あり。


コリント第1の手紙

 パウロが第2伝道旅行で設立した教会を去った後、教会内で起こった論争・諸問題につき、信仰上の見解・筋道等から牧会上の指示を与えた書簡。

 最近以下が刊行され、教会備付。「コリント第1の手紙」部分の執筆者は高橋敬基氏(農村伝道神学校教師)。

『新共同訳 新約聖書注解Ⅱ ローマの信徒への手紙〜ヨハネの黙示録』(共著、日本基督教団出版局 1991年2月)


コリント第1の手紙15章について

 新約聖書中、復活についての最も長い論議の箇所。

 1〜11節「キリストの復活」
 12節〜34節「死者の復活」
 35〜58節「復活の体」

 この論議の背景には、キリストの復活は認めたが、キリスト者の復活(からだのよみがえり)を否定した霊肉二元論の知者を自認するグノーシス(知識)主義者がいた。

 パウロは肉体のからだ、そして文化的生の連続性を否定する。

 これを「日々死んでいる」(コリント第1 15:31)と「内なる人は日ごとに新しくされる」(コリント第2 4:16)と同時的・逆説的に表現する。

 パウロはまた、肉を離れ、霊だけが天界にゆくというグノーシスの二元論を否定する。

 35節以下の区分。35(設問)、36ー38節、39−41節(神の創造的行為を語る)、42ー44節、45ー49節(復活論)。


パウロの主張

 この世のからだ(肉のからだ、ソーマ・プシュキコン)は来るべき世の体(霊のからだ、ソーマ・プネウマティコン)へと繋がっている。

 ただそれは、死を挟んでいる。

 肉(状態)と霊(関係)との二つの軸の決定的な違いを媒介するものが「死」。

 霊は神からの創造による以外にない。神の恵みそのもの。

 神は死(断絶)と生(全体)の主である。ゆえに「からだ」の主である。

 38節「神は、みこころのままにこれ(ただの種粒)にからだを与え……」。

 この言葉を心に留めたい。

(1991年4月7日 神戸教会週報 岩井健作)


1991年 説教

1991年 週報

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