声をあげよ《イザヤ 40:1-11》(1989 説教要旨)

1989年9月17日、聖霊降臨節第19主日
(当日の神戸教会週報に掲載)
9月22日(金)青年会一泊研修交流会 発題

(牧会31年、神戸教会牧師12年、健作さん56歳)

イザヤ書 40:1-11、説教題「声をあげよ」岩井健作

”よきおとずれをエルサレムに伝える者よ、
 強く声をあげよ。
 声をあげて恐れるな。
 ユダのもろもろの町に言え、
「あなたがたの神を見よ」と。”
 (イザヤ書 40:9、口語訳)


 紀元前587年のバビロニア帝国によるユダ王国の破壊は、徹底したものだった、と言われます。

 ごくわずかの貧しい土地耕作者を残して、民族のほとんど、すなわち都市生活者、役人、祭司、軍人、手工業者などは家族ぐるみで捕囚の民としてバビロニア帝国に連れていかれました。

 捕囚民は、バビロンやニップールの都市よりも、むしろ辺境の地で、運河の建設、荒地の開拓、道路の敷設、農地の耕作、材木運搬などの重労働に従事させられたと推測されています。

 捕囚の地での異教的環境が、父祖の神ヤハウェを忘れさせ、バビロニアの宗教に靡(なび)かせた、とも言われますが、概して捕囚民は強い団結力をもって強烈な歴史意識に立ち、安息日の律法を重視し、儀礼的な外界を遮断して自民族の宗教を守ったとみられます。

 これを指導したのが、預言者的伝統に立った祭司たちでした。

 捕囚期の指導者エゼキエルなどです。

 彼ら預言者・祭司は、王国の滅亡は民族の不信に対する神の審きであることを教え、民に不信の悔い改めを説きました。

 やがて、解放と救済の時は来ると将来への希望を語って、捕囚の地の民族を励ましました。


 やがて、ペルシア王クロスの出現で、バビロニア帝国が倒され、彼の宗教政策により、捕囚民ユダヤ人は紀元前538年、エルサレムへの帰還を許されました。

 エズラ記によれば、捕囚民の一部は”セシバザル”を指導者として行動を始めたとあります。

 この背後にあって、帰還の信仰的意味を説き、精神的に励ました無名の預言者が”第二イザヤ”(イザヤ書 40-55章の執筆者)です。

 今日選んだ箇所はその冒頭のところで、第二イザヤの思想的・神学的主題が、劇詩的な文学構成で綴られています。


 ここは、1〜2節、3〜8節、9〜11節の3段落に分かれています。

 「天上におけるヤハウェの会議」という構成で、神が「議官」に語りかけ、議官が答えるという形をとっています。

 内容は、
 ① 捕囚という苦難の期の満了
 ② 解放と帰還の準備に伴う自然の変容と神の栄光の顕現
 ③ 神の支配の確立としての主の来臨

 捕囚の地で、項垂(うなだ)れていた者たちが、神による解放という途方もない大きな出来事に打たれていく最初の営みが《福音の伝令者として声を上げることだった》ということの今日的意味を、この箇所から学びとってまいりたいと存じます。

(1989年9月17日 説教要旨 岩井健作)


1989年 説教・週報・等々
(神戸教会11〜12年目)

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