汗臭いお母さん(1986 石井幼稚園)

「石井幼稚園・石井伝道所だより」1986年5月号 所収

(神戸教会牧師・神戸教会いずみ幼稚園園長 健作さん52歳)

”お母さんは子宝”と題して、5月7日 NHKおはようジャーナルが、岐阜県川辺町で椎茸栽培をしている横田喜子さん(39歳)のことを母の日にちなんで放映していた。7人の子が農家の労働をそれぞれ年齢と個性にふさわしい役割分担で手伝っている有様が素晴らしかった。

 5歳の子も椎茸パックの容器を包装作業の母の側にリズムにのせて差し出す。ダンボールの組み立て、米とぎ、風呂場掃除等々。

 しかし都市化してきたこの街の子たちも農家はかっこよくないらしい。

 長女が「お前のとこは椎茸なんか作り、貧乏たらしい」とからかわれた。その時、父親はしんみりと労働一筋にきた自分に惚れてくれた母のこと、七面鳥で失敗した中から椎茸原木一万本農家へと頑張ったことを話してきかせた。

 長女は、ジーパンにTシャツ、歯はガタガタ、手は荒れている、汗臭い母が急に好きだ、と言い切っていく。

 横田さんは食卓の団欒を大切にする。口で言うよりは親が一生懸命生きる姿を子供がじっと見ていることを信じて、日々を積み上げていく。将来はブラジルで椎茸栽培をやるのが理想だというが、子供たちはそれぞれ自由な人生を選んで欲しいという。

 そこには、子供たちを冷静に客観的に見る目、子供たちと低い姿勢で向かい合う目、自分の人生を遠くの目的に向かって見つめる高い目がある。親の子育てにはこんな三つの目が大切なのだと思わせられる。

 しかし何よりも、子のために生きるといった気負いもなく、また子にかかづり合いすぎる時間もなく、それでいて、子供たちと共にある人生がにじんでいるのが心温かかった。

 同時に「育て給うは神なり」(聖書、第一コリント 3:7)という信仰を親たる者はもっと心に刻んでよいと思った。

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