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「石井幼稚園・石井伝道所だより」1983年4月号 所収
(神戸教会牧師・神戸教会いずみ幼稚園々長 49歳)
「かにむかし」というお話があります。
むかしむかし、かにが柿の種を拾って、一生懸命育てて、やっと実を結ばせます。すると山から一匹の猿がひょいひょいと駆け下りてきて、柿の実を食べ始めます。かにが怒ると、青柿を投げてかにを殺してしまいます。でも子がにがたくさん生まれて、栗と蜂と牛の糞とハゼ棒と臼とが協力して、猿を退治するというお話です(『かにむかし』(文・木下順二、絵・清水崑 岩波書店 1976)。
これは昔の人の心の内を伝えると同時に、今の私たちの心を豊かにしてくれるお話で、子どもたちが何回も何回も「読んで!読んで!」とせがむお話の一つです。
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このお話の中には、実直なカニが要領の良い猿にやられてしまう悲哀や、ハゼ棒や牛の糞など日頃目立たない者たちも力を合わせれば、悪に負けることはないという教訓や、世代を超えて長い目でものを見る見方などが滲んでいて、大変心に沁みるお話です。
私はこのお話の中には、親や教師、今日教育に携わる者への鋭い問いかけがあるような気がいたします。私たちはどうしても子育てに当たってエリート指向をしてしまいます。
また、猿のように人を傷つけていながら、それに気がつかないことがたくさんあります。これは単に狭い個人的なお付き合いの範囲のことではなく、日本人が世界の人々、特にアジアの人々と共に歩んでいく時の心でもそういうことが言えます。
教会では、聖書の教えに基づいて、幼い時から、人に仕えるために命を捧げられた主イエスに従うことを志しています。どうかそういう心が満ち溢れる幼稚園になるよう、みんなで祈り求めてまいりましょう。
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「かにむかし」のお話から(1989 保育)