祈りの手(1979 石井幼稚園)

「石井幼稚園・石井伝道所だより」1979年4月号 所収

(神戸教会牧師2年目、45歳)

「♪むすーんで、ひらいーて、てをうって、むすんで……」といつも歌っているように幼稚園の生活は、手を使う生活だと思います。

 第一の「手」は動かす手でしょう。自分で洋服を着る、靴をはく、お箸を使う、お弁当箱をハンカチで包んで結ぶ。

 人間は「ホモ・ファーベル」、工作人間だといわれます。よく手や指を動かすことで頭脳が発達します。暗記だけで憶えた知識はやがて忘れてしまいますが、手を動かすことで身につけた知識は次々と伸びるのではないでしょうか。ポケットに手を入れて、じっとしていないで、手を動かしてよく遊ぶ子はきっと成長するでしょう。

 第二の「手」は繋がれた手です。お友達と手を繋いで遠足に行ったり、鬼ごっこをしたり、またある時は手に力をこめてお友達とけんかをしたり。手は人間関係の意思表示でもあります。手を出してお友達とよく遊ぶ子は、話すことや聞くこともよく伸びるでしょう。子供はお友達の中で育ちます。「手をつなぐ親の会」というグループがありますが、身体や情緒に障害をもつ親たちが、自分だけで悩むのでなく、手をつなぐことで、悩みを逆手にとって子供を育てる力にしていく姿はすばらしいと思います。手を繋いだ子供たちの姿は幼稚園の生活の大切な思い出となるでしょう。

 さて、ここで第三の「手」のことを考えてみます。これは教会の幼稚園の大切なひとこまです。「小さいおててをくみ合わせ、こうしておいのりいたします」とさんびかにあるように、祈りのためにくみ合わされた手です。病気で休んでいるお友達のために、またおまちがえをしてしまったとき、またよくがんばったとき、神に「おねがいします、ごめんなさい、ありがとう」を素直にいえる子、こんな手の使い方を知ってもらいたいなぁ。

 これが「教会の大人たち」のねがいです。では、私も手をくみ合わせて、卒園のみなさん、入園のみなさん、そして卒園児のみなさんの上に神の祝福があるようにお祈りします。


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