米軍再編とは何か − その危険と向き合う市民たち(2008 8.15平和集会・新潟)

2008.8.15(金)8.15平和集会、午後2時-4時、
日本基督教団 東中通教会(新潟県新潟市)

(明治学院教会牧師、75歳)

第一部「米軍再編」とは

1.「米軍再編」とは、米ソ二大勢力対立終結以後、アメリカの世界一極支配情況において、米国が「国家安全保障戦略(米・クリントン政権、1997年5月)」を、米国に有利に展開するための「世界的国防態勢の見直し」である。安全保障態勢の「加工(形成)・対応・準備(Shape-Respond-Prepare Now)」をここ10年余に渡って完遂させる政策である。

2.その内容は従来の「ヨーロッパ10万、アジア・太平洋10万」という数の米軍から「機敏で柔軟な能力」の米軍に転換(トランスフォーメーション)し「地球軍」の役割を果たすことである。「蓮の葉戦略」(Lily Pad Strategy)「基地ベース」「場所サイト」「地点ロケーション」への巧妙な編成換え。               

3.再編の5原則
① 同盟国の役割を強化する。
② 不確実性と戦うための柔軟性を高める。
③ 地域内のみならず地域を超えた役割を持たせる。
④ 迅速に展開する能力を発展させる。
⑤ 数ではなく能力を重視する。

4.再編
① ドイツと韓国(削減)
② 東ヨーロッパ(対ミサイル前進作戦地)
③ 中央アジア(米国対中ロの覇権争い)
④ アジア・太平洋(グアムの変貌:ミサイル原潜、遠征航空軍、海兵隊・含司令部移転[日本資金])
⑤ イラクとアフガニスタン(恒久基地確保)

5.日本との関わり
① 要求。日米安保の否定(「極東条項」の無視、「領域外戦闘行動の事前協議の無視」。法的制度の転換。憲法9条体制の根本的転換)
② 日本政府の対応。主体的安全保障外交の対応の欠如。「日米戦略協議(2004年10月24日、パウエル・町村)」で、3点合意(共通戦略目標、自衛隊の役割と協力、部隊・基地の具体的あり方決定)。
「再編」が沖縄地元負担削減、抑止力の維持、程度に報道、国内議論が深まらず、基地関係自治体よりの情報開示要求の続出。その間、政府は、憲法体制堅持の世論を押さえ込みながら、実質的に米国の要求への協力を国内法「整備」で蓄積する。
(1997年)「日米防衛協力に関する新ガイドライン」
(1999年)「周辺事態法」「物品役務相互協定改定」
(2000年)「日米調整メカニズム」
(2001年)「テロ対策特措法」
(2003年)「武力攻撃事態法」
(2004年)「米軍行動円滑法」「ACSA再改定」

6.3点合意の共通の戦略目標(2005年2月19日合意)

①「国際テロや大量破壊兵器および運搬手段の拡散といった新たに発生している脅威」(情況認識)
②「グローバル化した世界において諸国間の相互依存が深まっていることは、このような脅威が日本及び米国を含む世界中の諸国の安全に影響を及ぼしうる」(確認)
③「(両国は地域的な限定をせず)日米両国に影響を与えうる事態に対処するための能力を維持する」(約束)。

 この原則は「弾道ミサイル防衛」と「自衛隊の海外派遣」を含意している。

7.日米合意の帰着点(2プラス2、2005年10月29日)

「日米同盟 ― 未来のための転換と再編」。(マスコミでは「中間報告」であるが実質は「最終報告」)。

 内容は自衛隊の転換。日本政府による「中期防衛計画」(2005-2009年)はこれに応じたもの。

8.日米「同盟転換」の実際
① 合同司令部(情報能力の高い米軍への従属、調整は自治体の協力など社会レベルを含む)
② ミサイル防衛(MD)展開。
 米本土防衛は集団的自衛権の行使に該当。SM3(水平100km),PAC-3(水平10km)、北朝鮮ミサイル想定の米イ-ジス艦配備(2004年10月)は米本土のため。
③ 合同演習の変質。
 自衛隊施設、民間空港、民間港を含め、自衛隊・自治体職員参加を伴い「国民保護のための住民非難訓練」の実施(2006年1月「ヤマサクラ」の指揮所演習)

9.米軍基地の再編(別表参照)。
「再編実施のための日米ロードマップ」(2006年5月1日)

① 沖縄。海兵隊のグアム移転(司令部中心8,000名{含家族17,000名}、2014年まで。費用1兆1,900億円の59.3%、7,000億円を日本側負担で合意)。普天間の移転先はキャンプ・シュワッブ沿岸(1996年SACO{沖縄に関する特別行動委員会}合意以来、閣議決定65億円を投じた辺野古沖案は激しい住民闘争で断念、結果港湾を含む恒久原案の実施強行)。

 普天間移転まで航空自衛隊基地使用に合意。海兵隊半減により嘉手納以南の小規模5基地・施設の返還。沖縄はより直接的な戦闘要員の訓練、兵力補給基地の性格に変貌。

② 岩国。普天間から空中給油機KC130移転(SACO合意)。厚木基地から艦載機移転。海自哨戒機部隊は厚木に移転。

③ 座間。米陸軍第一軍団(フォートルイスから)新司令部移転(2007年12月)(在日米軍の世界戦略の象徴的変化)。陸上自衛隊中央即応集団司令部(2012年)がUEX(新編成旅団、統合作戦能力)と自衛隊特殊部隊と結合される。司令部結合は「米軍再編」を最も体現。

④ 相模総合補給廠。戦闘指揮訓練センタ―の設置。統合作戦のための訓練施設。

⑤ 横田基地。航空自衛隊総合司令部と米軍第5空軍司令部の併置。MD作戦協力体制。

⑥ 厚木基地。空母航空団(艦載機、FA18、EA6B、E2C)と輸送機(C2)が岩国に移転。沖合滑走路完成後、訓練空域確保(夜間訓練NLPが前提、最終合意は2009年)。

⑦ 車力分屯地(青森)ミサイル探知早期警戒用レ―ダ―設置(2006年)。

⑧ 横須賀。第7艦隊司令部と海自司令部隣接。原子力空母(ジョ―ジワシントン)配備。

10.日本政府の説明の偽り。在日米軍を日本防衛と位置付け、外交的主体性を放棄し、「戦術的協力」から「戦略的協力」強いる米国に追従、米軍優遇政策を継続。「再編」を「基地負担の軽減」と偽りつつ「基地恒久化」「グローバル化」を実現し、米軍世界戦略に加担、国是であるはずの「憲法9条」を民意に問うことなく民意を抑え込み(マスメディアの責任は大きい)「安保」による憲法の解釈「破壊」を質的に超える強引な実質「破壊」(戦争遂行国家)へと猛進する。

第二部 「米軍再編」その危険に向き合う市民たち

1.「武力で平和は創れない」(新聞意見広告のキャッチフレーズ)

「米軍再編」理念は、軍事力によるアメリカの世界支配秩序(パックスアメリカーナ)の構築。圧倒的軍事費(2003年米国防予算4,013億ドル{イラク軍事予算647億ドルを含まず}は、世界の軍事支出8,000億ドルの半分)をもっても、民族紛争、地域紛争、テロの温床、国際紛争、を押さえ込むことは不可能。

 日本の「憲法9条理念」、武力によらない平和への筋道は活きている。いわゆる「九条の会」(日本全国6000以上)、「9条実現」(市民意見広告、百万人署名運動)の草の根市民運動が対抗。「憲法実現」(反改憲運動)、「9条を変えるな、恒久派兵法反対!」等の集会。

2.民主主義の破壊に向き合う

 小選挙区制、民営化政策で憲法体制堅持層・勢力(革新政党支持者、労組など)を押さえ込み、さらに「郵政民営化」で得た多数派で、民意を問うことなく「米軍再編」を盾に「新ガイドライン」以後、「米軍再編」実現のための国内「法整備」強行。そのつど市民的抵抗。情報(マスメディア)、教育領域での熾烈な戦い。

3.地方自治の破壊

「安全保障は国の専管事項」との名目で、地方自治体の住民の意志の無視。岩国、横須賀、名護、相模原のケース。

4.人間の破壊

 米軍兵士は生活苦で他に選択肢の無い貧困層(堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』、映画、藤本幸久監督「アメリカばんざい」で指摘される兵士)、1970年代の兵士には「兵士であるより前に人間であれ」の意地があった(岩国での反戦米兵等)。イラクにおける非戦闘員、市民の死者。