弟子たちを選ぶ(2009 小磯良平 ⑰)

2009.3.4(水)12:20-13:00、湘南とつかYMCA “やさしく学ぶ聖書の集い”
「洋画家 小磯良平の聖書のさし絵から聖書を学ぶ」⑰

(明治学院教会牧師、健作さん74歳、『聖書の風景 − 小磯良平の聖書挿絵』出版10年前)

画像は小磯良平画伯「イエス、漁師を弟子にする」

(サイト記)集会当日の”声”を反映したバージョンです。

マタイ4:18-20、マルコ1:16-20、ルカ5:1-11

1.「小磯良平さんの聖書の挿絵からの学び」は新約聖書に入って2回目です。前回から学び方を変えました。今まで旧約は「講義型」の学びでした。新約は、みんなが参加して学ぶことを試しています。素朴な感想あるいは疑問などを出してみて下さい。挿絵は誰にでも開かれています。有りのままの感想、疑問などはだれにでもあります。案外、先入観を持たない直感が、既成観念を破って、生活感覚から聖書のテキストに迫るものを暗示することがあるのではないでしょうか。それを大切にしたいと思います。ファシリテーター(促進役)は私(岩井)が務めます(これも初めての試みです)。専門知識を必要とするところは、出来る限り私が当たります。前回の纏めは別プリントで作りました。(当日5名出席)

2.感想
(I)「この絵なんとなく夕方みたいな感じがしませんか?」
(O)「いや朝でしょう」
(M)「湖の東の浜だと西日ですが、西の浜だと午前も昼に近い時刻ではありませんか。人物の影からの想像ですが」
(W)「ルカの記事をよむと、ぺトロたちが夜通し漁をしたが魚がとれなかった話と結び付いていなすから、朝でしょう」
(I)「それに関連して思うのですが、明るい朝の絵というより何となく仕事が終わって後始末をしている疲労感を感じるのだけど」
(0)「私は、クリーム色の光に希望を感じます」


3.感想
(N)「ずいぶん大きな帆の船ですが、ガリラヤ湖ってそんなに大きいのですか?」
(I)「南北20キロ、東西12キロ、湖面は地中海からみると海面下212mだそうです」(W)「霞ヶ浦の近くに住んでいて、よく帆のある漁船をみましたが、大きな帆でしたよ」(N)「小磯さんはこういう船などの考証はしてるのですね」
(I)「写実の画家だからきっと調べているでしょうね」
(M)「この絵の人物は、弟子にするには、そこら辺の人たちという感じがする」
(I)「それはうまく言えていますね。普通の漁師、そこに意味があるのではないでしょうか」

4.ここでちょっと解説を入れさせていただきます。

 聖書のこの箇所だけを読むと、通り掛かりに海辺でイエスが呼び掛けたら漁師がイエスの弟子になったという理解がされます。当時の漁師たちは生活的にも疲れ果てていて、イエスの招きに感動して「従った」のだ、というお話として理解されそうです。

 でもちょっと調べてみると、漁師は、決して社会的最下層の人たちではなく、船を所有し、雇い人もいたので、知識層に通じる人たちだったようです。日頃からイエスの教えや振る舞いに共鳴していて、共鳴者として弟子になったのだと思います。

 たしかに漁師たちを取り囲む生活は、当時の政治、経済、社会の状況から疲労困憊させられる日常生活であったのだと想像されます。そんな中で「人間をとる漁師」(原文「人間の漁師」)という新しい関係に生きるように招き出したのがイエスでした。「人間を釣る」という表現は旧約エレミヤ書16章16節に出てきます。

 この物語自身が語り手の創造による部分が多いと思われますが、ここに出てくる4人「シモン、アンデレ、ヤコブ、ヨハネ」の人たちはイエスの活動のかなり早い時期から弟子であったことは歴史的事実でしょう。

5.この絵も語っているようにイエスが湖のほとりで積極的に漁師に語り掛けています。「習い事」などの師弟関係は、弟子が師を選ぶものですが、イエスが積極的に漁師に語り掛けたという事に、信仰的テーマとしての「選び」「召命」「招き」などのメッセージを、この箇所と絵から汲み取ってもよいのではないかと思っています。

6.ちょっと飛躍かもしれませんが、イエスのことが説かれている「教会」も、自分が主体的に行っているように思えますが、基本的には「招き」の内の出来事という理解を私などはしています。小磯さんなどは、親の代から神戸教会です。ある方が私に「小磯さんは『檀家』だ」と言われましたが、私はそれでよいのだと思っています。

7.小磯さんは、多趣味の人でした。モデルシップをよく作っていました。カーテンを切って帆布にして奥さんからたしなめられた、というエピソードを聞いた事があります。神戸教会の古い納骨堂のボックス、小磯さんの遺骨の傍らに、自作のモデルシップが飾ってあったのを覚えています。

 画集をみると「帆船のある風景」(水彩 1960) 、「漁船」(1962 2枚、紙ペン)、「ヨットハーバー(逗子)」(水彩 1962))、「KOBE, THE AMERICAN HARBER」(水彩、コンテ1985)などが、船を描いた絵として残っています。

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洋画家・小磯良平の聖書のさし絵から聖書を学ぶ

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取税人と食事をする(2009 小磯良平 ⑱)

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