2006.5.28、ブラジルの旅(2004年夏)から2年後
小井沼宣教師の宣教報告会での応答レジュメ
(明治学院教会牧師 72歳)
1.人との出会い
渡辺英俊さん、小井沼国光さん、小井沼真樹子さん、中ノ瀬神父、佐々木治夫神父、その他、旅の中の数多くの人々。特に、センテーファ「土地なき農民」の「土地取得闘争」の人々。
2.貧しさとの出会い
ブラジルは平均所得(貧富の格差を考慮すると)日本の三十分の一くらい。現在の世界金融資本の標的にされた収奪による。大都市周辺に形成しているファベイラ(都市スラム)の状況。サンパウロ市郊外のファベイラ・サンタ・イネスは13,000人が住む。9割が東北部の農村を棄てて来た人たち。一割が上層階級、2割が中産階級、後の7割は極貧。統計資料(小井沼国光、後掲書)アメリカを 100とした国民総生産は日本では49.2、ブラジルは2.6。
絶対的貧困との関わりを考える(関係の絶対性)。衣食住など人間生活の基本的必要(ニーズ)を充足しない低所得水準(1971年価格で所得75ドル以下)を「絶対的貧困水準」という。一人当たり所得が 250ドル未満の低所得開発途上国では人口の52パーセント6億3,000万人。
3.本との出合い
この度の旅を契機として学んだ本。
・レオナルド・ボフ、クロドビス・ボフ、大倉一郎・高橋弘訳『入門解放の神学』(1999 新教出版)
・渡辺英俊著『旅人の時代に向かって−21世紀の宣教と神学』(2001 新教出版) 他7冊
・小井沼国光著『先駆ける「煉獄時代」のブラジル』(2003 トッパンプレス)
・松本敏行『大地のリズムと歌 −ブラジル・オリンダ通信(196/8-1998/11)』
・フマニタス慈善協会発行『赤い大地の中間たち −フマニタス慈善協会25年の歩み』2002、及びビデオ
・伊藤千尋『燃える中南米』(岩波新書 1988)
・内橋克人『<節度の経済学>の時代』(朝日新聞社 2003)
・西川潤『貧困 −21世紀の地球』(岩波ブックレット 1983)
・タリーブ・ガーレイクス・斉藤聆子訳『貧困』(2000 星の環会)
4.貧困と戦う教会との出会い
カトリック教会・メソジスト教会で働く、神父・牧師・教会の信徒を媒介にした民衆の貧困との戦いの「支援」。教会は極貧の人達の苦悩を共にしている。それは、神は貧しい人達の苦悩と共に居ます、との福音本来の信仰の在り方。「解放の神学」。及びその聖書理解。
5.聖書の読み方の運動との出会い
聖書の歴史批評をふまえ、絶対的貧困の立場から読み解く。日本の教会が正統的神学から読み解いてゆくのと対称的。初期教会以来、歴史の中では、社会の貧しさを見つめる事をしないで、「貧しさ」を「心の貧しさ」に置き換えてしまう動きがずーっとある。例えば、マタイの教会。「貧しさ」(ルカ)を「心の貧しい人は幸いである」と言い換えている。神の前での謙虚と「貧しさ」とは別の問題。