最近の寄贈本の中から(1997 週報・新年・書評)

1997.1.5、神戸教会、
降誕節第2主日、新年礼拝週報

(神戸教会牧師19年目、牧会38年、健作さん63歳)

『主よ来てください ー ヨハネ黙示録私訳・講解・注釈』

今井和登著(キリスト新聞社出版事業部 1996)

 この本は、はりま平安教会(兵庫県加古川市)牧師の著者が、教会の婦人たちを対象とした《聖書を読む会》で行った講解を文書化したものである。

 牧会50年を経た著者・今井氏の意欲にまずは圧倒される。

 ”ハルマゲドン”などという言葉が一人歩きする今日の状況で「ヨハネ黙示録」を正しく読む責任を地道に果たそうという熱意がすごい。

 兵庫教区播州地区教師一同・教会役員一同の推薦文が温かい。


『パウロ書簡 新約聖書第4分冊』

青野太潮訳(岩波書店 1996)

 新約聖書原典への忠実さ。

 脚注、補註(用語解説)、翻訳責任者名の明示、特定の信仰理解を前提としない学問的正確さ、が本書の特徴。

 パウロ真筆の7文書が収録されている。

 著者・青野氏はかつて神戸教会夏期集会(1992年)に来援いただいた方。

 私たちはそれぞれパウロ書簡に自分の「聖句」を持つ、それをこの訳で一度確かめてみてはどうだろうか。


『桑原重夫の福音書案内 ー 歴史とテキスト』

桑原重夫著(西宮公同教会出版事業部 1996)

 関西神学塾で著者・桑原氏が行った講義のまとめに、ここ数年の聖書講話を加えたもの。

 共観福音書(マルコ・マタイ・ルカ)のテキストの微妙な差異にそれぞれの生活の座(教会形成の論理)からの意識のずれを読み取り、現代の私たちが歴史に関わる時の意識を検証する読み方。

 教理的読み方をテキストに押し付ける人々が多い中での貴重な発言。

 桑原氏も神戸教会夏期集会(1994年)講師。


『幼児教育の系譜と頌栄』

高道基編著(頌栄保育学院 1996)

 待ち望まれていた頌栄保育学院の100年史。

 A.L.ハウ女史の42年にわたる頌栄での働きの意味を探り、その広がりとしての幼児教育が日本の近代に何をもたらしたかを、卒業生の働きをも含めて、一気に語る。

 巻末に「京阪神幼稚園遊嬉」が収められている。

 明治期の「頌栄保母伝習所」の水準の高さに驚かされる。


『言葉と出会う本』

笠原芳光著(法蔵館 1996)

 古今東西、114人の「言葉」を右ページに選び、左ページに短いエッセイを記す。

 毎日新聞に2年3ヶ月、週一回で連載した文章の集大成である。

 宗教や人生に関わる言葉・散文・詩など、季節感を重んじ、読者をして豊かなイマジネーションへと導く。

 著者・笠原氏の読書の射程の広さに驚かされる。

”宗教が特殊な、あるいは偏狭なものではなく、ゆたかな、そして深い精神文化の表現であることが求められている今日、この書にもささやかな意味があるのではないだろうか”(同書あとがき)

 ここに著者・笠原氏の今日までの思想と生き方が込められている。


(1997年1月5日 神戸教会週報掲載 
岩井健作)


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1997年 週報

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