はじめに 『地の基震い動く時』(96年版)

本書は1995年、兵庫県南部沖地震(阪神・淡路大地震)を神戸市で体験し、以後被災地で、自分の勤務しているキリスト教会の牧師として、あるいは一市民として過ごしてきた中で綴った文章をまとめたものです。見舞いや支援を受けた知人・親戚などへ誰でもが書く挨拶や、地震後も当然の日常活動として担当している神戸教会の日曜日の説教や、被災地にいる故に引き受けたキリスト教内の雑誌や機関紙への掲載など、その都度、特定の対象に向けて、必要に迫られて書いたものです。地震で家屋が全壊し、家族と死別し、生業に打撃を受けられた方たちが悲嘆にくれている中で、直接にはそれ程の経験をしなかった者の綴った文章に「地震」という表題をつけて発表することが、その真実にどれほど迫れるのか、という躊躇を覚えます。でも、地震後、様々なご支援を受けたSCM研究会の西川治郎氏が、拙い私の現状報告としてお送りした雑文を丹念に目を通され、何とかまとまりをつけて構成して下さり、被災地と非被災地を結ぶ絆として下さったので、あえて、SCM叢書の一つに加えて戴くことをお受けいたしました。この7ヶ月余を省みると、教会、キリスト教界、幼稚園・幼児教育の仕事や、関係する福祉団体、地域住民の方たちの運動の支援やお付き合いなど、ここに収録していただいた文章には入ってこない分野がたくさんあります。また、マスメディアの報道にはどうしても恣意性があって、被災地の緊急事態が未だに継続している様子などは伝えられていません。そんな中で、被災地の現状を多少ともお察し下さるよすがとなれば望外の幸いです。