シークエンスとフィードバック「隣人とは誰か」《詩篇 34:12-19、ルカ 16:19-31》(1992 週報・説教補助)

1992.9.13、神戸教会 週報
聖霊降臨節第15主日

(神戸教会牧師15年目、牧会34年、健作さん59歳)

この日の説教:詩篇 34:12-19、ルカ 16:19-31
「隣人」 岩井健作


 日本基督教団の聖書日課、9月13日(日)には「隣人」のテーマの元、4箇所の聖書テキストが挙げられている。

 これらの箇所を自分で開いて読み、各人の心に神が語られることを聴きとり、「隣人」への想いを黙想し、新たな言葉と行動とを与えられることが、キリスト者としての修練というものであろう。

 以下は、そのような営みへの示唆となれば幸いである。


詩篇34篇11〜18節

 ”主の目は正しい人をかえりみ、その耳は彼らの叫びに傾く。”(詩篇 34:15、口語訳)

 ある日、警察の一方的な「被疑者」扱いで、冤罪へと追い込まれているかたを、「救う会」とその家族から支援して欲しいとの手紙を受け取った。

 詩篇の言葉により頼んで、祈りと共にカンパを送った。

 この詩篇作者も不当な苦しみに耐え、かつ祈り、神いまし給うとの信仰を固くされたに違いない。


申命記15章7〜11節

 是非、開いて下さい。

 ”あなたの神、主が賜る地で、もしあなたの兄弟で貧しい者がひとりでも、町の内におるならば、その貧しい兄弟にむかって、心をかたくなにしてはならない。また手を閉じてはならない。必ず彼に手を開いて、その必要とする物を貸し与え、乏しいのを補わなければならない。あなたは心に邪念を起し、『第七年のゆるしの年が近づいた』と言って、貧しい兄弟に対し、物を惜しんで、何も与えないことのないように慎まなければならない。その人があなたを主に訴えるならば、あなたは罪を得るであろう。あなたは心から彼に与えなければならない。彼に与える時は惜しんではならない。あなたの神、主はこの事のために、あなたをすべての事業と、手のすべての働きにおいて祝福されるからである。貧しい者はいつまでも国のうちに絶えることがないから、わたしは命じて言う、『あなたは必ず国のうちにいるあなたの兄弟の乏しい者と、貧しい者とに、手を開かなければならない”。(申命記 15:7-11、口語訳)

 神様、「手を開く」という温かみのある生き方をさせて下さい、と共に祈りましょう。


ヨハネの第一の手紙 4章15〜21節

 ヨハネ書簡の典型で、神への愛と兄弟への愛の相関関係が語られる。

 「ヨハネの”兄弟”の射程は教会の壁の内側だ」として、かつてE.シュタウファーはその著『イエス ー その人と歴史』(日本基督教団出版局 翻訳 1961)で批判した。

 けれども、この「神と兄弟」との両方向の緊張はいつも忘れてはならない。


・ルカによる福音書 16章19〜31節

 今朝の4つのテキストの本命であろう。

 「金持ちと貧乏人ラザロ」のお話。

 話は2段階に分かれる。19節〜26節は、ユダヤ教にも共通した譬え。

 後半27節〜31節は、5人の兄弟が黄泉の苦しい所へ来ないよう求める金持ちの訴えに対して、もし彼らがモーセと預言者とに耳を傾けないなら、死人の中からよみがえってくる者(イエス)があっても、彼らはその勧めを聞き入れはしないだろうと結ばれている。

 ”『もし彼らがモーセと預言者とに耳を傾けないなら、死人の中からよみがえってくる者があっても、彼らはその勧めを聞き入れはしないであろう』”(ルカによる福音書 16:31、口語訳)

 貧しい者への援助の教えは、旧約(モーセと預言者)に示され、さらにイエスの御心でもある、《心を開いて聴かねばならない》とはルカの主張。


 私は最近、システム工学の専門家から「制御(コントロール)」の話を聞いた。

 工学的な制御にはシークエンス制御とフィードバック制御があり、前者は順序よく定められたプログラムを展開するが、後者は目標と現実との誤差を「反省」しながら進むのだそう。

 この話は、私に色々な示唆を与えた。

 今日のテキストで言えば、「ラザロの存在」が現実であるということを、「隣人」という目標に沿って、フィードバックさせる促しがそこにはある。

 イエスは《神のフィードバック》ではなかったか。

(1992年9月13日 週報掲載 岩井健作)


1992年度 神戸教会 秋期伝道集会

日時:10月18日(日)
講師:宮田光雄(東北大学名誉教授)
礼拝説教「イエスと出会う」
午後講演「生命の水を求めて」(グリム童話を読む)


青年会一泊研修交流会(参加者は19名)

日時:9月22日(火)〜23日(水)
場所:舞子ビラ
主題:「青年会今後の活動方針 ”どないする?青年会”」
お話:岩井健作牧師

1992年 説教

1992年 週報

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