客間の外(1989 石井幼稚園)

「石井幼稚園・石井伝道所だより 第40号」1989年12月 クリスマス号 所収

(神戸教会牧師・石井幼稚園代表役員 56歳)

客間には彼らのいる余地がなかったからである。 ルカ 2:7


 大相撲九州場所で小錦関が初優勝した。千秋楽で琴ヶ梅を寄り切ると大腕で何度も涙を拭っていたのが印象に残っている。彼は米国ハワイ州出身で25歳。本名はサレバ・アティサノエという。優勝を心から祝したい。だが、彼の相撲界での活躍について、ある米国週刊誌が「日本人は小錦に閉口している。体重のせいではなく国籍のゆえに。小錦の活躍は日本人の民族的エゴイズムを傷つけた」と書いているという(朝日新聞 11月27日社説)。スポーツ紙にも「小錦、日本に帰化か」などという見出しがあった。

 当の小錦は「ボクは日本人にはならない」と言い、むしろ米国人として日本と米国とを結ぶ役割を果たしたいという。日本人の内部に、もし日本人だけの囲いを作って、彼を「外人」としか見ない何物かがあるとすれば、それは、当の私たち日本人には見えにくい部分で、それは、日本人の外側にいる人からこそ指摘されて初めて気がつくことなのであろう。

 イエス誕生の物語の中で、飼い葉桶の置かれた場所は客間の外だったという。客間は親しい内々の知人との交流の場であった。ユダヤ人たちも同一民族、同一村落、同一の家系では皆親しかったのであろう。しかし、その客間の外には「帰化」しなければ歓迎されない「外人」が居たかもしれない。少し象徴的に考えれば、イエスの誕生が客間の外であったことは深い示唆に富む。

 私たちが、内々の人間だけで交流の囲いを作ってしまう時、イエス=神の子は、その外で飼い葉桶から十字架への道を歩む。そしてそこではイエスを囲んで「客間」には入れなかった人々の生きた交流が生まれていた。

 今年もクリスマスには子どもたちの献金が幾つかの場所に送られる。それが「客間」の内から外への営みではなく、イエスの誕生を祝う「客間」の外の人々の喜びへの仲間入りのしるしであるような献金でありたい、と願う。

(サイト補)クリスマス献金送付先
・重度精薄施設 止揚学園
・原爆老人ホーム 清鈴園
・乳幼児施設 新生塾
・医療協力会 JOCS
(紙面に記載されているのは以上4団体、団体名は紙面の表記に従っています)