今、なぜ、JOCSなのか(1980 神戸)

1980年11月15日発行「神戸JOCSニュース みんなで生きる」(第1号)掲載
神戸JOCS(日本キリスト教海外医療協力会)発足から3ヶ月

(神戸教会牧師、健作さん47歳)


 石川信克医師が短期帰国された折、多少個人的な関係もあり、来神の貴重な時間をさいて、教会で集会を持っていただいた。現在ワーカーとして働いておられるバングラデシュでの結核対策の地域医療の現況をスライドで学んだ。平原を曲折してよぎる河と、居住地のために盛られた土地、そのために出来た池、雨季には湿原となる田園、二千年前と変わらない単純な生活をする村の人々のおだやかな動きが伝わって来る。そして、そこに生きる人たちのあるがままの共同性に支えられて進められる地域医療の足どり確かな働きが感動を呼び起こす。石川医師が「貧しい人々」とは言わずに「単純な生活の人たち」と言葉を選んで用いていたことが心に残った。単純な生活を支えている人と人との純なつながりとしての共同性を、強めていく方向で、自立を促す手助けが、JOCSのかかげる「協力」の意味であることを教えられた。「アジアへ中古衣料を送ってくれることよりも、その衣料を繕って自分で着るという生活のスタイルを身につける中から、例えばバングラデシュの人々が少しでも経済的に自立するために、彼らのハンドクラフトの作品を受け入れていくというような方法で彼らの生活を理解する事が必要なのだ」という訴えがあった。

 それにしても、アジアへの関わりの現状はどうだろか(たとえ企業のあり方などにはふれないにしても)。マスコミが取りあげて再び批判の目にさらされたというので取りあげる訳ではないが、衆院外務委員会で兵庫選出の土井たか子氏が「比島買春ツアー」追及をしているように、「アジア・キリスト教協議会」主催のマニラでの「観光問題民間会議」の席上問題になった日本人男性セックスツアーはひどいものだ(多少くわしい現地リポートとして、朝日新聞 1980年10月16日、松井やより編集委員の報告)。その記事には3年前に台湾の良心的旅行業者が「恥という字をご存知ですか」という意見広告を日本で出したことが記されていた。にもかかわらず今年10月25日号「キリスト新聞」によれば、台湾鳥来(ウーライ)の日本人集団「買春観光」で現地の人々の生活と心が「破壊されてしまった」と呂金俊牧師の記事が心を痛める。

 今なぜ、JOCSなのか、と問われるならば、たとえゆるやかではあっても、日本のアジアに対する関わりを、出来る限り広汎な民間レベルでただし見直していく諸々の働きに対して、その方向性を提供できる歴史と基盤をもった運動であるということだ。もちろんこれは岩村昇博士をはじめ諸ワーカーとそれを支える人たちの地味な積みあげに負う事が多い。それを継承すべき実践の持続、拡大、思想性がこれからの課題であろう、と思う。


(サイト記)石川信克医師を「多少個人的な関係もあり」と健作さんは書いているが、溢子さんの妹Hさんのお連れ合い石川義和氏(元東北大学物理学教授)の弟が、石川信克医師。



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